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今日の筆洗

2023年01月16日 | Weblog

一九八〇年代をどう表現するか。経済は絶好調。メード・イン・ジャパンの製品は世界中で売れに売れる。エズラ・ボーゲル氏が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で世界は日本を見習えと書いたのは七九年。日本人が戦後、最も自信にあふれていた季節だろう▼YMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の発表が同じ年だった。テクノポップと呼ばれる電子楽器による新しい音楽。欧米での評価も高く、当時の日本人はSONYやTOYOTAと同じようにYMOに日本の自信を感じていた気がする▼日本のロックドラマーの先駆者でYMOなどで活躍した高橋幸宏さんが亡くなった。七十歳。アルバム同名曲や「シチズンズ・オブ・サイエンス」でのタイトで正確なドラムや独特なボーカルを思い出す▼日本人の自信と書いたが、YMOが奏でていた音楽はそれとは正反対だったのだろう。経済繁栄の中、非個性的で画一的な技術の時代へ向かうことへの皮肉と警鐘。機械による音楽や高橋さんのアイデアでメンバーが着た赤い人民服もその表れかもしれない▼サディスティック・ミカ・バンドでの盟友、加藤和彦さんが高橋さんを「空が青いと歌っただけで悲しさを表現できる」とかつて評した▼無機質にも聞こえた音楽だが、高橋さんは人類の悲しみを歌声とドラムに込めていたか。走りすぎてしまったドラムがつらい。