日が暮れる。
火を囲み、3人は話をする。
華は、今育てている花の話を。
相変わらず、いくつか花を集め、育てているらしい。
また、北一族の村に行って、園芸のものを買いたい、と。
「ほら、あのときの花、まだ元気なのよ」
「あのとき?」
巧は首を傾げる。
華も首を傾げる。
「えーっと、いつだった?」
「だから、巧はそれを訊いているんだろう」
携帯食をほおばりながら、向が云う。
「巧が買ってくれた花なのよ」
「そんなことあった?」
「何年前だったかな?」
華が云う。
「私がひとつ買って、もうひとつ巧が買ってくれたのよ」
その言葉に、巧はぼんやりと思い出す。
「海一族産の?」
「それ!」
「海一族産ってどう云うことだ?」
「海辺に咲く花ってこと」
「それが何で、華ん家で咲いているんだよ?」
「育て方がいいから、かな!」
「すごいな、華は」
「俺からも云うよ、すごいな、華」
「とってつけたように、向!」
華は巧を見る。
「紅色とか紫色の花が咲いてるよ」
「それは、よかった」
巧は頷く。
「花で、お腹いっぱいにはならないだろう」
「お腹とかの問題じゃない!」
「いいから、お前らも食えよ」
向は、小刀で携帯食である肉をそぐ。
巧と華に配る。
食べる。
「それ」
巧は云う。
「北に行ったときに買った小刀?」
「ああ、これか」
向は、小刀を見せる。
丁寧に刃が研がれ、手入れされている。
「3人で行ったときに買ったやつだ」
向が云う。
「持ちやすくてな、いいんだよ」
「ふーん。私でも使えそう」
「狩り用よりも、こうやって、ものを食べるとき用にしてるけど」
握りやすいから、と、向は再度云う。
「もうひとつほしいな、これ」
「私もほしいな」
「俺も買おうかな」
「だよな、巧!」
「だから、私も!」
「おそろか、俺ら!!」
3人は笑う。
「また、北一族の村に行きたいね」
火を見つめながら、華が云う。
「てか、3人で北に行ったの、いつの話だ?」
「3年前だ」
「3年前!?」
「そんなに!?」
「そりゃあ……」
向が云う。
「俺も背が伸びたわけだ!」
「成長期か!」
よし、と、向が立ち上がる。
「近々、北一族の村に行くとしよう!」
「ねね、あのときお昼食べた店に行こうよ」
「いいね」
「楽しみ~」
火を囲み、3人は話を続ける。
あたりはすでに、日は落ちている。
獲物が出るまで、もう少し。
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