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「『成院』と『戒院』」17

2020年10月13日 | T.B.2017年

宗主の屋敷に、戦術・占術・医術の大師が集う。

『成院』は次期医術大師として
麻樹に付き添う形で参加する。

医術と占術は
当代が高齢なので
次代候補が付いている。

戦術大師は前代が死亡した為
一時的な代理として任を任せられたばかりの者。

「………」

なぜ、歴代の猛者感で
座っているのか。

水樹ってああいう所ある。

戦いの腕も立つ、が
指導側となると少し不安。

不安だけど、
もう家庭も子供も居るし
そろそろ落ち着いて来た、よ、ね。

と皆も自分に言い聞かせる形で
無理矢理納得している。

次代戦術大師で水樹の兄、大樹が
ずっと胃のあたりを押さえているが
仕方ないよな、と
なんとも言えない目線を『成院』は送る。

そう、仕方がない。

まさか、前代の戦術大使が
数年で座を退く事になるとは
誰も予想していなかった。

砂一族の来襲。

大医師である麻樹に代わり
宗主の家系の患者を看ることが多い『成院』は
必要以上に物事を知ることになる。

そのせいだろう
がらり、と
周りの状況が変わったと感じる。

ふと、宗主の方を見る。

同年代で弟のように見ていた彼も
本来であれば宗主になる予定ではなかった。

宗主はこちらを見たように見えたが
『成院』の視線には気づかず、
そのまま村の守りの話しを進める。

「では、そのように」

話しは終わり
皆がぱらぱらと帰路につく。

大師と言われてはいるが
こういう場の話し合いに
あまり医術師が口を出す場面など少ない。

ただの頭数を揃えたような物だ。

「成院」

声をかけられ振り返る。

「宗主様」

共に歩いていた大医師は
それでは先に、と
一礼の後、場を離れる。

「で、宗主様、用件はなんだ?」
「………いや」

それはこちらのセリフだ、と
宗主は逆に問いかける。

「何かあるのか?
 もの言いたげだったが」

どうやら先ほどの『成院』の視線には
気がついていたらしい。

「大した事では……」

いや、と『成院』は
問いかける。

「これからどうしていくつもりだ?」
「どう、とは?」
「一族の事、それに、」

跡継ぎの事。

言葉にせずとも伝わったのか
宗主は眼を細める。

「いち医術師が口を出すことではないな」

そう答えるだろうと思った、と
『成院』はため息をつく。

そんな『成院』の様子を見て
宗主は言葉を返す。

「人の事を気にかけている場合か?」


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