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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「タロウとマジダとジロウ」2

2017年02月21日 | T.B.2001年

南一族の名産品は豆。
となると、
銘菓だって豆を使った物になる。

豆を砂糖で煮込んで餡にして
その餡で餅米を包む。
お茶に合う、まったりおやつ。

ぼたもち、と言う。

家でも出来るが
村の中心にある和菓子屋さんのぼたもちは
最高に美味しいので
タロウは時々、お店に立ち寄る。

「こんにちは」

少しずつ機械整備の仕事も増えて
忙しいやら、嬉しいやら、
今日は自分へのご褒美のつもりだ。

マジダも遊びに来るだろうから
少し多めに買っていこう。

「10個詰め合わせを一袋ください」

自宅に戻り、袋を広げる。
出来たての柔らかい状態。

お茶セットを準備して
まったりと過ごす。

「………」

1時間ほど、まったりと。

「今日はマジダ来ないのか」

まぁ、良いんですけど。
タロウは結構色々な事に関して
タイミングが悪い。

「ユウジさんにおすそ分けしようかな」

うーん、と
農具整備の師匠?の名を
呟きながら立ち上がったその時。

「……っ!!?」

びくっと、タロウは
思わずぼたもちを落としそうになる。

タロウ宅の農具整備小屋の
開け放った扉。
仁王立ちで、少年が立っている。

「ええ?いつから??」

しかも、めっちゃ睨み付けてくる。

最近だんだん増えてきた
農具整備の仕事を
親に頼まれて伝えに来たのかもしれない。

タロウがまったりし過ぎて
中々声を掛けられなかったのかもしれない。
そりゃあ怒るな、とタロウは近寄る。

「ごめんね、気付くのが遅くて」

「おまけぇ」

「え?おま?」

「おまけだごらぁ」

……南一族の方言だろうか。
一瞬思考停止したタロウは
少年が差し出した袋に気がつく。

「今日は10個以上買ったら
 一つおまけだったのに母ちゃんが渡し忘れて」

あ、と
タロウは気がつく。

この子は、和菓子屋の一人息子だ。

「そうか、わざわざありがとう」

しかも受け取った袋には
おまけの一つと
おまけ付け忘れのお詫びでもう一つ。

「ねぇ、少しお茶していかない。
 食べ慣れているかもしれないけど
 君のお家のぼたもち、
 とてもお茶に合うんだよ」

沢山あるからね。
と、タロウはその子をお茶に誘う。

が。

「敵に情けは受けねぇ」

……敵とは。

何か気に障ること言ったかな、と
不安になりつつあるタロウに背を向け
少年は立ち去りながら言う。

「だけど、
 うちの菓子への褒め言葉は
 ありがたく頂戴するぜ!!」

ざっ、ざっ、と
地面を強く踏みしめながら
少年は去り、
タロウは一人残される。

「……ええええ」

さらに増えたぼたもちは
ユウジさん宅におすそ分けしました。



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