「…………!?」
涼は、はっとする。
……ここは?
目を開く。
周りを見ようとする。
けれども、よく見えない。
山の中ではない。
崖の下ではない。
どこか人の住む場所。
そこに、横たわっている。
身体は、……動かない。
「気付いたのね、西一族」
……西一族?
誰かがいる。
彼に、云っている。
「あの雷雨の中、崖から落ちて助かるなんて奇跡よ」
その声は、涼のすぐ横から聞こえる。
「しかも、雷も落ちたんだって?」
横になったまま、涼は声のする方向を見る。
「すごいわ、普通は助からない」
「……お前は」
「いったいどうやって助かったの?」
「山一族?」
「そうよ」
山一族は笑う。
「ここは、」
「山一族の村に決まっているじゃない」
山一族が云う。
「西一族が、そうそう入れるところじゃない」
「……ああ」
涼は呟く。
「……助かった、のか」
「そうだと云っているでしょう」
山一族は息を吐く。
「よかったわね」
横になったままの涼を、山一族はのぞき込む。
「涼、とか云ったかしら」
訊く。
「いったい、何をしたの?」
「……何って?」
「どうやって助かったかと、訊いているの」
涼は、山一族を見る。
けれども、視線が上手く合わない。
「あの状況で助かるとはとても思えない」
「…………」
「でしょう?」
「…………」
「何をしたの?」
涼は首を振る。
「なら、当ててあげましょうか」
山一族が云う。
「……魔法、ね?」
「……魔法?」
涼の返しに、山一族は目を細める。
「見慣れない魔法の痕跡があったと」
その場にいた山一族が云っていた。
「裏一族がいたからではなく?」
「まあ、裏の可能性もあるだろうけど」
山一族は云う。
「あなたが使った魔法でしょ?」
「…………」
「普通、西一族は魔法を使わない」
「…………」
「でも、あなたは魔法を使える」
「…………」
「しかも、相当、慣れているとみた」
涼は答えない。
目を閉じる。
「ちょっと。黙りはやめて」
山一族は云うが、涼は目を開かない。
「あなた、下手したら、訊問がはじまるわよ」
涼は何も云わない。
「何よ……」
山一族は息を吐く。
と
誰かの足音。
NEXT