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「成院と戒院」3

2014年04月22日 | T.B.1999年

東一族の村の中を歩く。
すれ違う人は皆、黒髪に黒い瞳。東一族の特徴だ。

西一族は白色系の髪に瞳を持つという。
冷戦状態が続く今では姿を見た事がない者の方が多い。
噂に聞く狩りの一族。
同じ白色系の髪を持つ北一族と似ているのだろうか、と
成院はぼんやりと考える。

「成院!!」

突然の声に振り向くと、東一族の女性が立っている。
「晴子……久しぶり、元気だった?」
「元気だよ!!私はそれしか取り柄がないから。
成院は、どう?」
晴子が気遣うように言ってくる。
「あぁ、うん。なんとか」
弟と晴子はいつも成院を気に掛けてくれていた。
以前、成院が酷く落ち込んでいたときもそうだった。

「……そうだね、うん」
じゃあ。と晴子は持っていた荷物を抱えなおす。
「私、これから弟の面倒見なきゃ」
「わざわざありがとな」
「ううん、気にしないで、またね、成院!!」

そうして、晴子は一度立ち止まる。

「……ねぇ、成院」

きっとそうだと、成院は思っていた。
今、晴子が聞きたいことぐらい成院にも想像が付く。

「カイ、は……元気かな」

晴子は泣きそうだった。さっきまで笑っていたのに。

「戒院、は」
言い淀んだ成院に、晴子は首を振る。
「ごめん、私、何言っているんだろう。
……いいの成院。もう、いいんだ」

「だって、あいつ嘘つきだよ」

晴子の事嫌いになったとか。
他に気になる人が出来た、とか。
ずっと見ていた成院は知っている。
それも、これも、全部、嘘だ。

成院は笑顔で答える。

「戒院なら元気にしている。
きっとまた、晴子の家を訪ねていくよ」

晴子は言う。

「成院こそ、嘘つきじゃない。
そんなはずないよ。きっぱり別れたのだから」

やっと少し晴子が笑う。

「でも、ありがとう。
最近見かけなかったからちょっと気になっていたんだ。
元気にしているなら、いいよ、それだけで」

晴子は駆けていく。
成院はその姿を見送る。


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