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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「西一族と巧」14

2020年03月06日 | T.B.1999年

「向!」
「はいよ!」

 巧は走る。

 足下は悪い。

 回り込むように、向が走る。

 ふたりの間には、獲物。
 道はない。
 草をかき分ける音。

 獲物は必死で逃げる。

 巧と向は、武器を握りしめる。

 獲物は早い。

 が、

 追い詰めている。

「行け、巧!」

 向が叫ぶ。
 その言葉と同時に、巧は、獲物に飛びかかる。

 獲物は鳴き声を上げる。

「早くとどめを!」

 獲物は巧を振り払う。

「待ってました!」

 華が現れる。
 突然のことに、獲物は、たじろぐ。

「油断するな!」
「判ってる!」

 獲物は弱っている。
 華はひるまない。

 巧と向も追いつく。

 華も武器を振り下ろす。

「どうだ!」
「やったか?」

 獲物は、

 倒れる。

 3人は、その様子を見る。
 動きが止まるのを、待つ。

「いけるか?」
「大丈夫そうだな」
「今日の獲物ぉ!」

 3人は、手を叩く。

「お疲れぃ!」
「よかった」
「いい獲物ね!」

 巧は、獲物を持ち帰る準備をする。

「いや~。俺たちの連携最高」

 そんな向に、華が首を傾げる。

「向は、何したの?」
「俺か?」
「何か、走っていただけだったっぽいですけど」
「俺は、獲物を追い詰めた」
「あ~、うーん」
「そして指示を出した!」

 向は胸を張る。

「俺は、班長だからな!」

「はいは~い」
「何だ、華! その適当な返しは!」
「妥当なる適当です」
「妥当なる!?」

 ふたりのやりとりに、巧は笑う。

 そして

 そろそろ行くか、と云うころ。

 華が云う。

「ほら、新月のときに出る、獲物の話」
「新月?」
「満月じゃなかったか?」
「白い熊の話よ」
「今日は何だ?」
「新月だ」

「ちょっと待ってみようよ」

 もうすぐ、日が暮れる。

「待つのか?」
「本当に?
「そう」





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