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「律葉と秋葉と潤と響」23

2019年02月19日 | T.B.2024年
律葉達は辺りを警戒しながらその場に腰を下ろす。

「律葉、無理しないでね」
「ええ」
「お水飲む?横にならなくて大丈夫?」
「平気よ、ありがと」

秋葉は心配して
律葉にあれやこれやと声をかけてくれる。

「本当は早く、
 診てもらった方が良いんだろうが」

潤も渋い顔で言う。

今日の出来事は
今までに無いこと。

もし何かの強襲の前触れであるのなら
その痕跡を少しでも探さなくてはいけない。

先程潤が放った救援の狼煙を頼りに
人が駆けつけるまで
その場で待機することになる。

それにしても、と
響が言う。

「俺達、色々当たるねぇ」

ケガだったり、
解散危機だったり。
なにより今回の事。

「引き寄せる何か、が、あるのかもなぁ」
「誰にだよ」
「うーん」

ぐるりと響が皆を見回す。

「………全員?」
「えー!!?」
「まさか響、
 自分以外の、じゃないでしょうね」
「それこそ、響が、じゃないのか!?」

「お!!
 皆、無事の様だな」

一番乗りにセナが駆けつける。

「セナさん」
「ありがとうございます」

「もうすぐみんな来るからな。
 ケガ人はいるか?」

荷物を下ろしながら
皆の様子を見る。

「響と律葉か?
 こっちこい、診てやるから」

手招きしながら、
セナは落ち着き払った声で
問いかける。

「―――で、何があった?」

潤は簡潔に話しを伝える。

「………」
「………」
「………うーん」

セナは頭を抱える。

「信じがたい、ですよね」

何せその魔物の跡形すらない。
作り話だと言われても仕方の無い状態。

「いや、話は信じるよ。
 ただ問題が大きすぎる」

そう。

あんな物が山にいて、突然襲って来るのであれば
安心して狩りも出来ない。

「村長には俺から伝えよう。
 だが、集まってくる皆には
 狩りに手こずったと言っておけ」
「そんな」
「むやみやたらに
 皆が知って良い問題じゃない」

知らない方が良いこともある、と
セナは言う。

「分かったな?」
「はい」

で、と
皆が集まる前に、最後の問いかけをする。

「お前達、どうやってそれを倒した?」

「弱っていた所を
 狩りを行う時の様に」
「弱っていた?」

潤は頷く。

「俺が合流したときには。
 そうだろ、秋葉、律葉」
「………ええ」

セナが、律葉をじっと見る。

「なぜ、弱っていたんだ、律葉?」

「そ、れは」

律葉は言い淀む。
西一族は、本来、
魔術は使えない。

だから、父親が言うのだ。

人前では使うなよ、と。

狩りの一族であるからこそ、
団結は強く、
異質には厳しい。

使えるはずのない物を使う。
律葉は今、そう言う立ち位置。

「あの」

「わからないの」

暫く黙って居た秋葉が言う。

「律葉が私を庇ってくれて、
 それで、その瞬間、何かが起きたんだと思う」

見ていない。
確かに、秋葉にはちょうど律葉が壁になっていた。

秋葉は、見ていない。

律葉は息を吐く。

まだ、大丈夫。
まだ、
いつも通りに皆と過ごせる。

「ええ。
 私も、目を瞑ってしまったから、
 なにがどうなったのか」

元々、弱っていたのかも、
そう言って、律葉はセナを見つめる。

「ふーん」

そうか、と答えると
セナは口元を緩める。

「なんであれ酷いケガじゃなくて良かった。
 人が集まった所で
 山を下りるとしよう」


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