TOBA-BLOG 別館

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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」33

2018年02月06日 | T.B.1998年


「カオリ!!」

トーマは
カオリをそっと抱き上げる。

「おい!?
 しっかりしろ!!」

声を掛ける。
呼吸はあるが、カオリの反応は無い。

「何か、飲まされているのか?」

「トーマ」

アキラも駆け寄る。

「そちらも上手くいったようだな」
「あぁ。
 カオリは無事か!?」

心配そうに覗き込むアキラに
カオリを渡す。

「息はあるんだが。
 早く村に降りて医者に診せた方が」

顔を上げたトーマは
辺りの景色を見回し、驚愕する。

「魔方陣が消えていない!?」

儀式のために動いている陣が
まだ淡く光り続けている。

「裏一族は倒したんだが」
「なぜだ、まだ他に居るのか?」

いや、とアキラが言う。

「術者が倒れても
 止まらない類の魔法かもしれない」
「まさか、カオリが目覚めないのも?」
「あるいは、そうかもしれない」

「何にせよ、
 早くここを離れよう。
 カオリも魔方陣の外に出れば」
「そうだな」

アキラの後に続こうとしたトーマは
ふと、立ち止まる。

「トーマ?」

「アキラはカオリを連れて
 先に戻っていてくれ」
「なんだって?」

「俺は、この魔方陣の中心に行ってみる」

陣は中心に近づくほど精密な模様になって居る。
恐らくそれは、
流れる滝の裏側に向かっている。

禁忌の魔法。

死んだ誰かを生き返らせるのか、
不老不死を願うのか、
それとも、
夢物語の様なとうてい不可能な何か。

「そこに、
 裏一族の目的があるはずだ」
「………」
「いや、一緒に行こう。
 カオリに掛けられた術も知りたい」

滝の近くの岩場から
僅かな足場を辿り2人は進む。

「こんな所があったなんて。
 まるで隠し道じゃないか」
「実際そうなんだろう」

滝の裏側は洞窟のようになって居る。

「灯りを」
「待て」

木の枝を拾い
松明にしようとしているトーマを
アキラが制する。

「奥に灯りが見える」


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