「カオリ!!」
トーマの声。
アキラは振り返る。
トーマがカオリのもとにいる。
「おい!? しっかりしろ!!」
トーマが声をかけている。
けれども、カオリの反応はない。
「何か飲まされているのか?」
アキラもそこへと駆け寄る。
「トーマ」
「アキラ……、そちらは上手くいったようだな」
「ああ。カオリは無事か?」
トーマが抱き上げたカオリに、アキラは触れる。
呼吸はあるが、意識はない。
「息はある」
トーマが云う。
「早く村に戻って、医者に診せた方が」
ふと、
トーマが顔を上げる。
アキラも見る。
ほのかな光。
「……陣が消えていない!?」
地面に描かれた、紋章術の陣。
それが、淡く光り続けている。
つまり、儀式がまだ、続いていると云うこと。
「裏一族は倒したんだが、」
「なぜだ? まだほかにいるのか?」
「いや、」
アキラは目を細める。
「術者が倒れても、止まらないのかもしれない」
「まさか、カオリが目覚めないのも?」
トーマの言葉にアキラは頷く。
「何にせよ、早くここを離れよう」
アキラが云う。
「カオリも陣の外に出れば意識が戻るかもしれない」
「そうだな」
アキラはカオリを抱え、歩き出す。
が、
立ち止まったトーマに気付き、振り返る。
「どうした?」
「…………」
「トーマ?」
「……アキラはカオリを連れて、先に戻っていてくれ」
「何?」
「俺は、この陣の中心に行ってみる」
トーマの視線を、アキラは追う。
陣は、中心に近付くほど、精密な模様を描いている。
その中心は、
流れる滝の方へと向かっている。
滝の裏側へ。
「あそこに、」
「裏一族の目的が……」
ふたりは同じ方向を見る。
「儀式とは本当に、」
人の命を使うものなのか。
その命と引き換えに、死んだ者を呼び戻すのか。
それとも、不老不死を望むのか。
――禁忌の魔法。
「アキラ」
「いや、一緒に行こう」
アキラが云う。
「カオリにかけられた術も知りたい」
ふたりは頷く。
滝の裏へと向かって、歩き出す。
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