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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「辰樹と天樹」20

2016年10月21日 | T.B.2017年

「おい!」

 呼ばれて、辰樹は振り返る。

「おい! 辰樹!」
「ああ、うん。陸院か」
「おいおいおい。何だよ、それ」
「いや。お前に興味ないし」
「相変わらず腹立つな、お前!」

 辰樹は、横に立つ木を見上げる。

 ついこの前まで、小さい葉だったのに、
 木々には、ずいぶんと葉が広がっている。

 つぼみも、付いている。

「はあ……」

 辰樹のため息に、陸院は目を細める。

「感傷的になっているのか?」
「別にー」
「気持ち悪いぞ、辰樹」
「関係ないだろ」

 辰樹は歩き出す。

「おい、待てって!」
「うーん」
「待てってば!」

 陸院は慌てる。

「今度の務めの話だよ!」
「務めー?」
「俺とお前で、務め!」
「えー。陸院となら、やだー」
「うわぁあああ」

 辰樹の率直な言葉に、陸院は落ち込む。

「だって、陸院とはやりにくいし」
「茶化してるのか?」
「茶化してるわけじゃない」
 辰樹は云う。
「事実だ!」
「ぉおおおおお」

 陸院は、ますます落ち込む。

「落ち込む俺を何とかしてくれ!」
「何だよ、お前」
「落ち込む俺を!」
「うるさいな、判ったよ!」

 辰樹も面倒くさくなって、頭を抱える。

「それで、」

 辰樹は陸院の肩を叩く。

「今度の務めは何だ?」

「……辰樹」

「迷い犬の探索か?」

「…………!!」

「それとも、今期の苗を植えるのか??」

「…………!!?」

「お前との務めはそんなもんだと俺は思っている!」

「辰樹ぃいい!!」

 陸院が本気で怒り出したので、辰樹は走り出す。

 走って

 走って

 走れるだけ走って、

 やがて、村の高台へとたどり着く。

 ここからは、水辺の方まで見渡せる。
 以前、西と争っていた頃の、見張り台の名残り。

「ふう」

 大きく息を吐いて、辰樹は坐り込む。

 風が吹く。

 花びらが舞う。

 音。

 何かの、音。

 ……足音?

「……あれ」

 辰樹は、その方向を見る。

「辰樹、今度の務めの話だけど」

 それは、先ほども聞いた言葉。
 けれども、これは、陸院の声ではない。

 辰樹は目をこらす。

「え? え、え??」

 そこに、

「天樹!?」



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