何人かの砂一族が倒れている。
けれども、砂一族は笑う。
「浄化薬持っているの」
「だーれだ」
「誰かなー」
おもしろそうに。
「東の畑の毒」
「広がっていくねー」
「大変だねー」
辰樹は天樹を見る。
「どうする?」
天樹は、砂一族を見回す。
ふと
ひとりの砂一族を指差す。
「あいつだ!」
それを合図に、辰樹が走る。
「げっ」
「ばれた!」
「ばれた!!」
その砂一族に、辰樹が追い付く。
「浄化薬を出せ!」
「ひっ!」
辰樹は、砂一族の懐に手を入れる。
「お前っ!」
別の砂一族が、辰樹に手を伸ばす。
が
すぐに倒れる。
天樹の矢が、当たっている。
「これだ!」
辰樹は紙を掴む。
浄化薬ではない。
けれども、浄化薬の作り方が記された、紙。
「おいっ!」
「返せ!」
「もう一度、魔法だ!」
辰樹は、後ろに飛ぶ。
走る。
「これ以上は不要だ!」
天樹が叫ぶ。
「撤収するぞ!」
「判った!」
と
答えた辰樹が、ふらつく。
「!!?」
慌てて、天樹が辰樹に駆け寄る。
「どうした?」
天樹は、辰樹の腕を見る。
血が、ほんの少し流れている。
「大丈夫、たいしたことない」
「いや、これは、」
血が流れている。
つまり、
その傷から、毒が入っていると云うことだ。
「辰樹、急げ!」
天樹は辰樹を立ち上がらせる。
最初に準備しておいた、転送術の場所へ。
「走れ!」
「…………?」
「辰樹?」
「…………」
「おい、しっかりしろ!」
「…………」
「しびれるか!?」
辰樹は目を閉じている。
天樹は、辰樹を抱え、走る。
「待て、東一族!」
「帰すんじゃないぞ!」
「動くな!」
砂一族の魔法が作動する。
天樹も、紋章術を作動させる。
が、間に合わない。
砂埃。
勢いで、天樹は倒れる。
刀を落とす。
すぐに顔を上げ、辰樹を見る。
その先に倒れた辰樹がいる。
ちょうど、転送術の上に。
「辰樹!」
「…………」
「辰樹! 聞こえるか?」
天樹が云う。
「その紙を持って、先に帰れ!」
「…………!?」
「行くぞ! 東一族村内へ!」
発光。
「うっ!」
「!!?」
「なんだ、なんだ!?」
すぐに、暗闇。
「何が起きた!?」
砂一族の声が響く。
そこには、誰もいない。
「……いないじゃん」
「なーんだ」
「東に逃げ帰ったか?」
静まりかえった砂漠に、散り乱れた砂一族が姿を現す。
「お前、逃げ帰ったんじゃないだろ!」
「結局、浄化薬の作り方、盗まれたじゃん」
「あーあ」
そして
その砂一族たちは、順番に姿を消していく。
「結果、砂の負け、だし」
「見張りを固めろよ」
「次は何の毒を作ろうかなー」
…………
…………
再度、静寂。
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