天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

埋蔵文化財は遺失物

2016-01-28 | Weblog
 先日、ある考古学の講座を聴きに行きました。
 色々面白い話を聴けましたが、その中で一番驚いた話が、
 発掘調査が終わって、土器などが出土した時には、
 警察に遺失物として届けるとの話でした。

 古い時代の遺跡やそこから出土された遺物などを、埋蔵文化財と言います。
 文化財保護法上の定義では、「土地に埋蔵されている文化財」としています。
 厳密には「埋蔵文化財」といった場合、
 土地に埋蔵されている文化財としての価値が認められる遺構と
 文化財としての価値が推定される民法第241条の「埋蔵物」としての遺物を指します。
 つまり、土の中にある時は文化財保護法の埋蔵文化財になり、
 民法の定める「埋蔵物」ですが、
 掘り出された時点で「拾得物」となるとの法的解釈がなされています。

 従って、発掘中に土器などが出土した時には、
 拾得物として、警察署に届け出る事になります。
 警察署では、拾得物として受け付けた埋蔵物が文化財と認められるときは、
 管轄の都道府県などの教育委員会に「埋蔵文化財提出書」を提出します。
 また、発見者は、「埋蔵文化財保管証」を管轄の教育委員会に提出し、
 これを照合することによって、鑑査が行われ、実物を見たことと同様にみなし、
 「文化財認定の通知」を警察署に行い、発見者にも認定通知の写しが送付され、
 出土品は、この時点で正式に文化財として認定されたことになります。
 実務的には、直接物を警察署に搬入するのは大変ですので、
 書面で行われているようです。
 警察署では、遺失物として公告する事になります。
 通常の遺失物は、2006年の法改正で3ヶ月ですが、埋蔵物は6ヶ月です。
 この期間が経過してから、発掘した団体などに所有権が移転する事になります。
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目明

2016-01-15 | Weblog
 江戸を舞台とした時代劇に
 よく出て来るのが目明(めあかし)です。
 岡本綺堂の「半七捕物帳」の半七や、
 野村胡堂の「銭形平次捕物控」の銭形平次が有名です。
 これらは善玉のヒーローとして描かれていますが、
 関東地方の目明となると、
 「二足の草鞋を履く」と言われるように、
 博打打ちややくざが目明を兼ね、
 幕府の役人である関東取締出役と結託して、
 悪事を働くと言うのが多いように思います。

 この目明の名称ですが、
 目明、岡引、手先、御用聞、小者などの
 幾つかの名前で呼ばれています。
 しかし、幕府の資料に出て来るのは
 目明、岡引、手先の3つのようです。
 そして、時間的には、
 目明、岡引、手先の順序との事です。
 目明の名称は、1712年(正徳2年)以前に使われ、
 1789年(寛政元年)までが岡引、
 その後は手先と呼ばれたようです。

 目明は正徳2年に廃止され、
 それ以降は表向きは存在しない事になりました。
 寛政元年には、町奉行所や火付盗賊改が
 目明、岡引を使う事を禁止しました。
 そしてその後の資料には、
 手先の名称を使って来たと書いてあるそうです。
 目明は、江戸と大阪では違いがあって、
 大阪では「猿」と呼び、
 生業を持っていて余業に目明をやっていました。
 江戸では、生業を持たず目明専業だったようです。

 専業となると、彼等の給料などが
 どうなっていたか気になります。
 名称が目明の頃は、公認の存在だったので、
 町奉行所から手当が出ていました。
 禁止されて以降は、犯罪者に科した「過料銭」や
 没収した土地の運用などが財源でしたが、
 それだけでは足りないため、
 深川などで、いかがわしい営業をしていた料理茶屋から
 金を出させて払っていました。
 天保12年から始まった天保の改革では、
 これらの料理茶屋を全部営業禁止にしたため、
 目明の費用を負担させる事が出来なくなり、
 代わりに吉原に負担させたようです。
 吉原の負担は、
 定廻りと臨時廻りの同心に1ヶ月42両の他、
 同心や目明の弁当代、船賃、駕籠代なども負担させられ、
 その総額は、1年で1200両、
 1両が現在の貨幣価値で20万円と考えると、
 2億4千万円の巨額になったとの事です。

 このように目明は、
 非公認の遊所や公認の遊所が奉行所に差し出す金で養われ、
 個別には非公認の遊所などから金品を受け取り、
 さらには善良な町人をゆすったり、
 たかったりしていた者もいたようです。

 以上、藤田覚さんの
 「大江戸世相夜話」に載っていた話です。
 この本は歴史学者が著したもので、
 江戸時代を理解するのには良い本だと思います。

コメント (4)
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