天然居士のとっておきの話

実生活には役に立たないけど、知っていると人生が豊かになるような話を綴りたいと思います。

十返舎一九

2010-05-29 | Weblog
 十返舎一九は既に多くの方がご存知の通り、
 「東海道中膝栗毛」の作者として知られています。
 1765年(明和2年)駿河国駿府町奉行の
 同心の子として生まれます。
 本名は重田貞一で、
 父親は奉行所の書記をしていました。
 父の跡を継ぎ奉行所に勤め、
 駿府町奉行小田切土佐守に従って大阪に転勤しました。
 彼は以前から作家志望だったらしく、
 大阪では近松門左衛門に弟子入りして、
 近松与七の名で浄瑠璃本を書きます。
 また、この頃十返舎一九の名を使いだしますが、
 これは、香道の関係の「黄熟香の十返し」からとったようです。
 黄熟香とは、東大寺の正倉院に伝わる
 香木「蘭奢待(らんじゃたい)」の正式名称で、
 10回繰り返して焚いても香が失せないと言われています。
 なお、蘭奢待については、以前ここでも書いた事があります。
 そんな事から一九は香道にも詳しかったとの話もあります。

 作家として専心するため武士を辞め、
 大阪で義太夫語りの家に寄宿したり、
 材木商家に婿入りして離縁になったりしていますが、
 後に江戸に出て、蔦屋重三郎と言う版元に寄宿します。
 浄瑠璃に詳しく、蔦屋と親しかったことから、
 一九が東洲斎写楽であるとの説もあります。
 蔦屋に居候していて書いたのが「膝栗毛」でした。
 当初は、江戸から箱根までだったようですが、
 物凄い人気であったため、二編三編と続き、
 8年がかりで東海道を完結させました。
 さらに『続膝栗毛』では、
 金毘羅、宮島の参詣を終え、木曽街道を経て、
 弥次さん喜多さんはやっと江戸に帰ってくるという、
 全12編20年がかりの執筆でした。

 1831年(天保2年)67歳で亡くなりますが、
 死期を悟ったのでしょう、
 周囲の人に、必ず火葬にするように頼みます。
 当時は土葬の方が普通でした。
 さて、荼毘に付してみると、
 何と一九の棺桶から花火が上がりました。
 死者の持つ頭陀袋に
 沢山の花火を仕込んでいたのでしょう。
 参会者は度肝を抜かれたに違いまりません。

 辞世の歌も詠まれています。
 この世をば どりゃおいとまに せん香の
  煙りと共に 灰(はい)左様なら
 実に洒落た最期だったと思います。
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ジェシー・ジェームズ

2010-05-15 | Weblog
 ジェシー・ジェームズはアメリカ西部開拓時代の強盗として有名です。
 しかし一方で、大衆の人気がある事も間違いありません。

 彼は、1847年ミズーリ州に牧師の息子として生まれました。
 南北戦争が始まると兄のフランクとともに、
 南軍のゲリラ部隊に加わります。
 1866年2月、ミズーリ州クレイ郡リバティでの銀行強盗を皮切りに、
 ジェシー・ジェームズは、兄やヤンガー兄弟とともに、
 銀行強盗を始めます。

 しかしながら、ジェームズ兄弟を有名にしたのは、
 なんと云っても「列車強盗」です。
 1873年7月、ジェシー達7人は、
 アイオワ州シカゴ・ロックアイランド太平洋鉄道の列車を脱線させ、
 現金輸送車の金庫から現金を強奪しました。
 レールの鋲を緩め、綱でレールを外せる様にしていました。
 本来の狙いは金塊の輸送車を狙っていたようなのですが、
 この列車の前に通過していました。
 これがアメリカで最初の列車強盗とされています。

 その後、ジェームズ兄弟は、銀行強盗と列車強盗を繰り返します。
 当時、アメリカの鉄道は、西へ西へと広がって行きますが、
 鉄道建設のために土地を奪われる農民が相次ぎ、
 このため、鉄道に反感を持つ農民も多くいたようで、
 そうした農民は鉄道を襲撃するジェームズ兄弟に共感を抱いていたようです。
 更に、彼は元南軍の兵隊や女性には特に優しく、
 無益な殺人は犯さなかったと言われており、
 その辺が彼の人気となっているのだと思います。
 銀行強盗の際に、流れ弾に当たって負傷した少女の入院費用を支払ったり、
 未亡人の借金を肩代わりしたりとのエピソードがあります。

 ジェームズ兄弟は、警察やピンカートン探偵事務所に執拗に追われながらも、
 捕らえられずに逃げ回りますが、
 それが可能だった理由として、彼らを匿う民衆がいたと言われています。
 1882年4月3日、ジェシー・ジェームズは隠れ住んでいたミズーリ州の自宅で、
 若い仲間のロバート・フォードに背後から撃たれ殺害されます。
 フォードは、1万ドルの懸賞金に目が眩んだと言われています。
 享年35歳でした。
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