HKT48『12秒』は、ファーストキスという普遍的なテーマに正面から取り組んだ王道アイドルポップだ。
歌い出しの「世界中で一番綺麗な宝石をあげる」は男の子のセリフだと錯覚した。宝石をプレゼントするのは「男から女へ」という既成概念を利用したトリックだ。聴き進むとそれは間違いで、女の子からキスを仕掛けていることが分かる。自分から動けない内気なオタク男子にとっては、夢のような状況だ。現実にはこんな都合のいい女の子はまずいない。
この曲が一番意識している過去のファーストキスソングは、渡辺麻友『大人ジェリービーンズ』だろう。
「12秒」という半端な秒数は、『大人ジェリービーンズ』のフレーズ「12秒くらいはそのまま動けなかった」からの引用に違いない。『大人ジェリービーンズ』はファーストキスの後12秒動けなかったと歌っている。HKT48『12秒』は、キスしている時間が12秒という点が異なる。
そもそもキスを宝石に例えているが、色とりどりで美しいのはジェリービーンズと共通である。柔らかいキスの感触は、宝石やジェリービーンズという硬いものとは異なっていて、ミスマッチ感が比喩の妙味を生んでいるのも共通だ。
更に2番では、彼はキスの途中で薄眼を開けて彼女の様子をうかがうと、彼女も目を開けていた。『大人ジェリービーンズ』では、彼女が「薄目開けて見ていた」と歌っている。
キスの時目を開けるか閉じるかは大いなる問題だが、秋元康の場合は「男は閉じる、女は閉じない」というのがポリシーのようだ。おニャン子クラブ『恋はくえすちょん』では「男の子はキスをするとき目をつぶらせるのですか」と質問させている。
その他にも過去の曲からの引用が多数見受けられる。こういうのを見つけるのは、曲を鑑賞する本筋ではないが楽しい。
「テトラポッド」は、『涙に沈む太陽』、『サーカスロマンス』(新田恵利)。
「寄せては返す波音」は、『友達のままで』『Only today』。
「君が守っていたもの」は、『バージニティ』『ひと夏の経験』(山口百恵)。
「友達には戻れない」は、『友達でいられるなら』、『哀しい予感』(岡田有希子)。
イントロの数小節から、早く歌いたくてたまらないメンバーのはやる気持ちが伝わって来るようだ。サビが特別印象的なわけではないが、全体にスピード感、躍動感があって、ワクワクして来るような曲調だ。
カップリング曲にも良い曲がある。
『カメレオン女子高生』。
既に絶賛する記事を書いたが、何回聴いても飽きない。大サビの「この中で誰でしょう?私!私!」というところも盛り上がる。歌詞、曲、アレンジが全てマッチングした完成度の高い曲だ。
そして前の記事の繰り返しになるが、単なるコミカルソングではなく、いつまでも可愛らしくありたいというアイドルの矜持のようなものが込められた力作だ。(こういう風に書くのも野暮だけれど)
『ハワイへ行こう』。
カップルでハワイ旅行へ行く歌と言えば、古い歌だが岩崎良美『どきどき旅行』を思い出す。「昇りつめていかせて ハワイに行かせて」という過激な歌詞にドキドキしたものだ。
『ハワイへ行こう』のカップルも、親には内緒でハワイ旅行を計画する。卒業式の日に誘われて、春休みにバイトしてお金を貯めたのだから、旅行当日はゴールデンウィークか夏休みだろう。直前の確認をしなかったから、彼が本当に来るかどうか不安になっている彼女の視点から歌われる。
旅行や駆け落ち当日に恋人が来ないという歌は『枯葉のステーション』『逃避行』(麻生よう子)など古今多数あり、この歌もそのパターンだ。しかしこの彼には来ない理由がない、さすがに来るだろうと思いつつ、聴いている方も俄かに半信半疑になる。果たして彼は現れたのか・・・。
オールディーズ風の曲調は、安心感があり、心地よく歌詞を追うことができる。そう考えれば、この曲は80年代が舞台、カラオケは既にあるが携帯電話はまだない時代の設定なのかもしれない。
『ロックだよ、人生は』。
ひまわり組公演中の1曲として2007年に発表された曲だが、今ではすっかりHKT48の持ち歌になってしまった。聴き比べたら、イントロが少し短くなっているし、楽器のバランスも変わっている。伴奏を録り直したのか、ミキシングだけやり直したのか。いずれにせよ新しい命が吹き込まれて蘇った。
改めて歌詞を聴くと、かなり過激な歌詞だ。このままでは世界は終わる、ミサイル撃ちまくり、死にゆく者は口を出すな、若者の出番だ。結構真面目に書かれたメッセージソングである。
ただ、具体的な行動を促すような政治的なメッセージが込められている訳ではない。現状に怒り、反発し、拳を振り上げ、「LOVE & PEACE」を希求すること、それが「ロック」だと抽象的に叫んでいる。抽象的だからこそ万人に対して説得力がある。
忌野清志郎や桑田圭佑の曲ほど話題にはならないが、スタンスは同じだと思う。こうした歌を自由に歌ったり聴いたりできることが、かけがえのない平和というものなのだと思う。
『微笑みポップコーン』。
イントロのピアノが、小さな泡がはじけるような繊細な感じで爽やかだが、ポップコーンが弾けるのとはちょっと違うのではないか。サイダーの泡とか金平糖のイメージだ。それが非常に惜しい。
気難しい彼女のご機嫌を取ろうとする歌で、定番のテーマだ。『猫の尻尾がピンと立っているように』がそうだった。
『抱いて、ツインテール』。
ツインテールの若い恋人に気後れする大人の男を、挑発するような歌詞は過激だが、曲調が陰気くさい。この歌はあまり気に入らなかった。
歌い出しの「世界中で一番綺麗な宝石をあげる」は男の子のセリフだと錯覚した。宝石をプレゼントするのは「男から女へ」という既成概念を利用したトリックだ。聴き進むとそれは間違いで、女の子からキスを仕掛けていることが分かる。自分から動けない内気なオタク男子にとっては、夢のような状況だ。現実にはこんな都合のいい女の子はまずいない。
この曲が一番意識している過去のファーストキスソングは、渡辺麻友『大人ジェリービーンズ』だろう。
「12秒」という半端な秒数は、『大人ジェリービーンズ』のフレーズ「12秒くらいはそのまま動けなかった」からの引用に違いない。『大人ジェリービーンズ』はファーストキスの後12秒動けなかったと歌っている。HKT48『12秒』は、キスしている時間が12秒という点が異なる。
そもそもキスを宝石に例えているが、色とりどりで美しいのはジェリービーンズと共通である。柔らかいキスの感触は、宝石やジェリービーンズという硬いものとは異なっていて、ミスマッチ感が比喩の妙味を生んでいるのも共通だ。
更に2番では、彼はキスの途中で薄眼を開けて彼女の様子をうかがうと、彼女も目を開けていた。『大人ジェリービーンズ』では、彼女が「薄目開けて見ていた」と歌っている。
キスの時目を開けるか閉じるかは大いなる問題だが、秋元康の場合は「男は閉じる、女は閉じない」というのがポリシーのようだ。おニャン子クラブ『恋はくえすちょん』では「男の子はキスをするとき目をつぶらせるのですか」と質問させている。
その他にも過去の曲からの引用が多数見受けられる。こういうのを見つけるのは、曲を鑑賞する本筋ではないが楽しい。
「テトラポッド」は、『涙に沈む太陽』、『サーカスロマンス』(新田恵利)。
「寄せては返す波音」は、『友達のままで』『Only today』。
「君が守っていたもの」は、『バージニティ』『ひと夏の経験』(山口百恵)。
「友達には戻れない」は、『友達でいられるなら』、『哀しい予感』(岡田有希子)。
イントロの数小節から、早く歌いたくてたまらないメンバーのはやる気持ちが伝わって来るようだ。サビが特別印象的なわけではないが、全体にスピード感、躍動感があって、ワクワクして来るような曲調だ。
カップリング曲にも良い曲がある。
『カメレオン女子高生』。
既に絶賛する記事を書いたが、何回聴いても飽きない。大サビの「この中で誰でしょう?私!私!」というところも盛り上がる。歌詞、曲、アレンジが全てマッチングした完成度の高い曲だ。
そして前の記事の繰り返しになるが、単なるコミカルソングではなく、いつまでも可愛らしくありたいというアイドルの矜持のようなものが込められた力作だ。(こういう風に書くのも野暮だけれど)
『ハワイへ行こう』。
カップルでハワイ旅行へ行く歌と言えば、古い歌だが岩崎良美『どきどき旅行』を思い出す。「昇りつめていかせて ハワイに行かせて」という過激な歌詞にドキドキしたものだ。
『ハワイへ行こう』のカップルも、親には内緒でハワイ旅行を計画する。卒業式の日に誘われて、春休みにバイトしてお金を貯めたのだから、旅行当日はゴールデンウィークか夏休みだろう。直前の確認をしなかったから、彼が本当に来るかどうか不安になっている彼女の視点から歌われる。
旅行や駆け落ち当日に恋人が来ないという歌は『枯葉のステーション』『逃避行』(麻生よう子)など古今多数あり、この歌もそのパターンだ。しかしこの彼には来ない理由がない、さすがに来るだろうと思いつつ、聴いている方も俄かに半信半疑になる。果たして彼は現れたのか・・・。
オールディーズ風の曲調は、安心感があり、心地よく歌詞を追うことができる。そう考えれば、この曲は80年代が舞台、カラオケは既にあるが携帯電話はまだない時代の設定なのかもしれない。
『ロックだよ、人生は』。
ひまわり組公演中の1曲として2007年に発表された曲だが、今ではすっかりHKT48の持ち歌になってしまった。聴き比べたら、イントロが少し短くなっているし、楽器のバランスも変わっている。伴奏を録り直したのか、ミキシングだけやり直したのか。いずれにせよ新しい命が吹き込まれて蘇った。
改めて歌詞を聴くと、かなり過激な歌詞だ。このままでは世界は終わる、ミサイル撃ちまくり、死にゆく者は口を出すな、若者の出番だ。結構真面目に書かれたメッセージソングである。
ただ、具体的な行動を促すような政治的なメッセージが込められている訳ではない。現状に怒り、反発し、拳を振り上げ、「LOVE & PEACE」を希求すること、それが「ロック」だと抽象的に叫んでいる。抽象的だからこそ万人に対して説得力がある。
忌野清志郎や桑田圭佑の曲ほど話題にはならないが、スタンスは同じだと思う。こうした歌を自由に歌ったり聴いたりできることが、かけがえのない平和というものなのだと思う。
『微笑みポップコーン』。
イントロのピアノが、小さな泡がはじけるような繊細な感じで爽やかだが、ポップコーンが弾けるのとはちょっと違うのではないか。サイダーの泡とか金平糖のイメージだ。それが非常に惜しい。
気難しい彼女のご機嫌を取ろうとする歌で、定番のテーマだ。『猫の尻尾がピンと立っているように』がそうだった。
『抱いて、ツインテール』。
ツインテールの若い恋人に気後れする大人の男を、挑発するような歌詞は過激だが、曲調が陰気くさい。この歌はあまり気に入らなかった。