新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

元ファーストレディー、ナンシー・レーガン

2021年03月09日 | 日記

 この本の第1章は出生証明書の写真で始まる。こんな本がかつてあっただろうか。
 この出生証明書は実際に著者が入手したものだろうが、一般に流布された「事実」と一致するものは生まれてきた赤ちゃんの性別と肌の色だけだ、と著者キティー・ケリーがいう。ナンシー・レーガンのメモワールによれば「生まれた病院の名は忘れたが、その病院は焼失した」となっているが、実際スローン・ホスピタルが火災にあったことはない。誕生日は1921年7月6日だが1923年にすり替えられている。母は33歳でナンシーを産んだが、29歳と偽っている。父はそのとき27歳だったが28歳にしている。母はヴァージニア州ピッツバーグ生まれだが、首都ワシントン生まれに変えられ、職業は主婦となっていたが、じつは女優だった。当時、女優は卑しい仕事と思われていた。ナンシーは17歳のとき正式に改名し、父方の名前を消し去った。父が裕福な家の出で、プリンストン大卒という学歴は嘘だったようだ。
 いうまでもないがナンシーは1981年から1989年1月までレーガン大統領夫人として、ホワイトハウスを切り盛りしていた。その後バーバラ・ブッシュ、ヒラリー・クリントン、ミシェル・オバマと世に名を残すファーストレディーが登場するが、ナンシー・レーガンはちょっと違った意味で名を残した。
 衝撃的な事実の羅列で始まるこの本は、読みたいと思いながら見つからず、この1年ほど探していたものだ。最近わが家のスチール倉庫で見つけた。倉庫は書庫として建てたものだが長い間、炭置き場にも使っていたので黒い炭の粉をかぶっていた。写真は裏表紙に載っている著者キティー・ケリーだ。資料に埋もれた状態はコンピューターがなかったころの資料保管方法と、著者の資料収集の徹底ぶりをうかがわせる。
「Nancy Reagan/The Unauthorized Biography」を読み始めた。Unauthorizedとは本人が「真実」だと認めていないという意味で、いわゆる暴露本に属する。

動物農場2

2021年03月04日 | 日記

 動物農場の動物たちは、人間の主人ジョーンズ夫妻を追い出してからは、これからは人間のためでなくすべて自分たちのためだと信じて働いてきた。そしていつか来る人間たちの復讐、巻き返しに備えることも怠らなかった。案の定、ジョーンズが仲間をつのり、農場取り戻しにやってくることを伝書鳩たちの速報で知った。人間は銃を携えている。塀を壊して乱入してきた暴徒たちと一戦を交える。動物たちの用意周到さが功を奏して、なんとか人間どもを追い払ったが、羊が一匹、銃の犠牲になり、リーダーの豚スノーボールが名誉の負傷を負った。ここでスノーボールが「動物農場のために命を捧げることは名誉だ」とぶち上げる。「そうだ、そうだ」の声。「動物農場のために」を「お国のために」に置き換えればどこかで聞いた文句になる。そしてスノーボールは負傷したみずからに勲一等を授与、名誉の戦死を遂げた羊に勲二等を与えた。上級国民と下級国民の差が明示された。
 スノーボールは風車の建設を提案する。日曜午前の集会で票決する際、とつぜんもうひとりのリーダー、豚のナポレオンが反対する。票決しようとすると、みなが予期しなかったことが起きる。若い犬たち9匹がうなり声を上げながら議場に乱入し、ナポレオンのそばにつく。風車建設賛成派を力で押さえ込んだ。その犬たちは、生まれたばかりのころからナポレオンが密かに教育してきたナポレオンの親衛隊だった。スノーボールはいたたまれず逃亡し、以後、姿を消す。ナポレオンは仇敵スノーボールを失脚させることに成功した。軍の圧力でクーデターを起こしたどこかの国を思い起こさせる。
 ナポレオンは風車建設を復活させ、農場内の資材だけでは足りないため、外部の人間と取引することを決める。おやおや「人間とは関わらない、お金にタッチしない、商取引しない」という動物農場の初期の目標はどうなったのか。違和感をおぼえた動物たちがいたが、それを明確に表現する能力がないために、丸め込まれてしまう。風車で発電できれば、自分たちの生活は一変する。夜は明るくなり、困難な農作業が電動機械で難なくできるようになる。明るい未来を描いてみせられればだれも反対できない。人間界との仲介者に外部の人間ウィンパーを選び、この人間を通じて今後は外界との取引をする。灯油、釘、紐、ビスケット、馬の蹄鉄など近隣の農場にしかないものを分けてもらうにはお金が要る。自給自足では発展の速度がかぎられていることが分かる。
 動物だけの世界であるにもかかわらず、人間界と変わらない様相を呈してきた。
 ジョージ・オーウェル「動物農場」1946年刊。


動物農場

2021年03月02日 | 日記

 ミスター・ジョーンズ夫妻が下男4人を従えて営む農場に飼われていた家畜たちがいっせいに蜂起し、人間さまのご主人を屋敷から追い出し、自分たち動物だけの国をつくろうとする。ご主人さまの部屋を覗いた瞬間、チャウシェスク宮殿、マルコス宮殿、いまならプーチン宮殿を見る思いがした。
 さて蜂起した動物たちのリーダーを務めるのが豚二匹だった。その名をスノーボール、ナポレオンという。二人は何かにつけて意見を闘わせたが、なんとか折り合ってやっていった。家畜たちのなかでは豚がいちばん頭がよい動物と思われていたようだ。ほかに犬、馬車用の馬、雌牛、アヒル、猫、犬、羊、雌鶏、鳩、ロバがいた。「すべての動物は平等だ」と高らかに宣言した。カラスだけはずる賢い生きもので、人間のスパイと目され、動物たちの一斉蜂起のとき人間たちと一緒に逃げてしまった。
 まずは憲法に相当するものとして、モーゼの十戒ならぬ七戒をさだめる。文字の読み書きを習い始めても、馬はABCDぐらいで停まってしまう。どの動物もが七戒全部をおぼえることは難しいと知り、「4本足はよい、2本足は悪」だけを唯一のモットーにしておぼえさせることになる。日本で十七条憲法、五箇条の御誓文がどうにか民衆に伝わったことはラッキーだったことになる。
 はじめみんないそいそと、また熱心に農場の仕事をし始めたが、やはりすべてが平等というわけにはいかなかった。馬車馬のようにパワーを発揮する馬に対して、猫はいつの間にか消え、昼食時にひょっこり現れた。ロバは何を言われても自分のペースを守り抜いた。
 子犬が9匹生まれたとき、ナポレオンはその9匹を納屋のロフトにあげてしまった。いわく、若い者には教育が必要で、英才教育を施し、栄養があるものを食べさせるために隔離する。
 スノーボールは何かにつけて委員会をつくり、議論して物事を決めさせようとしたが、たいていの委員会はうまく機能しなかった。政府の○○諮問会議の無能ぶりを思わせる。
 ご存知ジョージ・オーウェル作「動物農場」を読んでいる。むかし読んだ本を読み直している。



緊急事態解除、再拡大を防げ

2021年03月01日 | 日記

城山の本沢梅林は、紅梅が満開をすぎ、白梅は五分から七分咲きだった。

 首都圏以外の地域で緊急事態宣言が解除された。感染が再拡大するのではないかと危ぶむ声が多いが、繁華街での人出は減らない。なぜか。どのような場面で感染するかが、いまひとつはっきりしないからだ。
 飲食店での会話で飛沫が飛び、その飛沫にウイルスが含まれていると食べものを通じて自分の口に入る。これははっきりしているようだから、飲食店の利用を極力控えている。個人利用はするが、宴会を控えている。
 大便のなかに多数のウイルスが検出されているので、不特定多数の人が利用するトイレのドアノブなどに注意している。手洗いをこまめに実践する。
 ほかに何に注意すればよいのか。繁華街を歩くことで感染した例があるのか。マスクをすること以外に注意のしようがあるのか。感染場面を特定して示せるデータがないのだから、注意のしようがない。専門家が「市中感染が広がっている」というときの「市中感染」とはいったい何を指すのか。家庭内感染、職場感染以外は市中感染なのか。それでは何も意味しないに等しい。
 感染者数再拡大を抑えるために必要なことは、どのような場面で感染しているのかを示すことだ。そうすれば、人はそれに注意して行動する。感染経験者は、症状がどれほどつらかったかだけでなく、どのような場面で感染したと思われるかをもっともっと語ってほしい。感染経路不明のままで終わらせないでほしい。推定のことでもよいから、感染場所、場面を特定しようとしてほしい。それを公表することで、他の人がそれを気にしながら行動し、ひいては感染者数再拡大を抑えることへとつながっていく。
 何に注意すればよいかが分からないままなら、緊急事態宣言が解除されたいま、人びとは街へ繰り出していくだろう。感染経験者が感染経路を特定しようと努力し、それを公表してくれることを期待したい。