新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

動物農場2

2021年03月04日 | 日記

 動物農場の動物たちは、人間の主人ジョーンズ夫妻を追い出してからは、これからは人間のためでなくすべて自分たちのためだと信じて働いてきた。そしていつか来る人間たちの復讐、巻き返しに備えることも怠らなかった。案の定、ジョーンズが仲間をつのり、農場取り戻しにやってくることを伝書鳩たちの速報で知った。人間は銃を携えている。塀を壊して乱入してきた暴徒たちと一戦を交える。動物たちの用意周到さが功を奏して、なんとか人間どもを追い払ったが、羊が一匹、銃の犠牲になり、リーダーの豚スノーボールが名誉の負傷を負った。ここでスノーボールが「動物農場のために命を捧げることは名誉だ」とぶち上げる。「そうだ、そうだ」の声。「動物農場のために」を「お国のために」に置き換えればどこかで聞いた文句になる。そしてスノーボールは負傷したみずからに勲一等を授与、名誉の戦死を遂げた羊に勲二等を与えた。上級国民と下級国民の差が明示された。
 スノーボールは風車の建設を提案する。日曜午前の集会で票決する際、とつぜんもうひとりのリーダー、豚のナポレオンが反対する。票決しようとすると、みなが予期しなかったことが起きる。若い犬たち9匹がうなり声を上げながら議場に乱入し、ナポレオンのそばにつく。風車建設賛成派を力で押さえ込んだ。その犬たちは、生まれたばかりのころからナポレオンが密かに教育してきたナポレオンの親衛隊だった。スノーボールはいたたまれず逃亡し、以後、姿を消す。ナポレオンは仇敵スノーボールを失脚させることに成功した。軍の圧力でクーデターを起こしたどこかの国を思い起こさせる。
 ナポレオンは風車建設を復活させ、農場内の資材だけでは足りないため、外部の人間と取引することを決める。おやおや「人間とは関わらない、お金にタッチしない、商取引しない」という動物農場の初期の目標はどうなったのか。違和感をおぼえた動物たちがいたが、それを明確に表現する能力がないために、丸め込まれてしまう。風車で発電できれば、自分たちの生活は一変する。夜は明るくなり、困難な農作業が電動機械で難なくできるようになる。明るい未来を描いてみせられればだれも反対できない。人間界との仲介者に外部の人間ウィンパーを選び、この人間を通じて今後は外界との取引をする。灯油、釘、紐、ビスケット、馬の蹄鉄など近隣の農場にしかないものを分けてもらうにはお金が要る。自給自足では発展の速度がかぎられていることが分かる。
 動物だけの世界であるにもかかわらず、人間界と変わらない様相を呈してきた。
 ジョージ・オーウェル「動物農場」1946年刊。