アームチェア・トラベラーとして、南ア共和国を旅している。1450年からはじまり、1900年のボーア戦争時までたどってきた。現地のさまざまな部族に融和しながらも、かたくなに聖書の教えを守ろうとするオランダ系と、本国べったりのイギリス人たちが勢力争いを繰り広げてきた。
気候は温暖だ。なにしろ地中海性気候に分類されるほどだ。南緯34度にあるケープタウンはオーストラリアのパースに並ぶし、北緯34度に置き換えればロサンジェルスや地中海沿岸諸都市に匹敵する。南アメリカ南端のパタゴニアとはまったく異なり、寒くない。
ケープタウンにはテーブルマウンテンがある。そこにのぼって東に広がる雄大な平原を眺めてみたい。テーブルマウンテンはどのようにして誕生したのだろう。ベネズエラにあるものは、観光スポットとして賑わっている。ヘリコプターで降り立てるのか。南アのそれは、歩いてのぼることができるようだ。
南アの現在の首都はプレトリアか。ヨハネスブルグも発展した町のようだ。しかし両者とも海からは離れすぎている。鉱山の開発を意図してつくられた町だからだと思われるが、もっと海岸線の町を開発するべきではないか。飛行機より船で立ち寄れる町が、ケープタウン以外にもいくつかほしい。
ジェームズ・ミッチェナー「The Covenant」のおもな舞台は南ア共和国だ。ノートをとりながら9月中旬に読みはじめ、900ページまで進んだ。登場人物はすでに230を数える。人物名が出てくるたびに、この人はだれの子孫で、どのような考えの持ち主か、などと記録ノートを繰ることになる。地図をかたわらに広げて、地名の位置を確認する作業もある。遅々として進まないが、知らない土地のようすを知り、歴史をたどるのは楽しい。
ミッチェナーは登場人物が現地人かオランダ系か、はたまたイギリス人かを名前で知らせてくれる。どの人種かがはっきりわかるような名前をつけている。van Doorn, de Grootはオランダ系だし、Saltwood, Turnerはイギリス人だ。しかし200人を超える数の登場人物をそれぞれ名づけていくのは容易ではないだろう。フランスの小説家バルザックは登場人物一人の名前をつけるのに凝りにこり、散歩しながらやっと適当な名前を思いつくほどだった、と何かで読んだ。ミッチェナーの、世界の名前についての博識ぶりには目を見張るものがある。
さてあと230ページほど、いつになれば読み終えられるだろう。今日の午後は忘年会に出かける。