新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

香港のチョンキン・マンション

2021年08月03日 | 日記

 香港には世界各地から人が集まってくる。アフリカ、中東、アジア、中南米などから商売目当てで、出稼ぎのつもりで、あるいは中国へ入国する第一歩としてまず香港に到着する。香港当局が入国に際してひじょうにゆるやかな規制しかしていないから、深圳、広州など近くの大都市へ入って商売するための足がかりとしてまずは香港へというわけだ。中国本土への国境は穴だらけで、商品の密貿易も容易だ。香港警察も外国からの入国者や密貿易人たちに対して寛容だ。地下銀行、インフォーマルな両替商を黙認し、金融取引がしやすい環境をつくっている。諸外国から来る零細商人たちは香港市内で商品を買いつけ、母国へ輸出したり、母国から取り寄せた商品を香港市内で売りさばいたりして商売する。また母国から逃れてきた政治亡命者や出稼ぎ労働者がいる。その人たちを目当てしたセックスワーカーがいて、薬の密売人が暗躍する。物見遊山のバックパッカーが加わり、えもいわれぬ街に発展したのが香港だ。
 そのような新参者がまず身を寄せる安宿がチョンキン・マンションだ。香港島を目の前にした繁華街の一角にそびえる。1、2階は携帯ショップや両替商などが並び、3階以上が宿泊施設になっている。室内は意外に清潔に保たれている。さすがに世界有数の大都市だ。
 このようすを生き生きと描き出してくれたのが文化人類学者、小川さやか氏だった。小川氏はタンザニアの零細商人たちの生きざまに視点をあて、彼らの商売の流儀をみごとに曝いて見せてくれた。ただそれは、2019年時点でとどまっており、中国本土からの政治的締め付けが強まってからの民衆たちの動きがいまひとつ分かっていない。うえに述べたような人たちの暮らしはいまどうなっているのか。以前と変わりなく商売、生活ができているのか。それとも香港当局や警察の取り締まりが強まり、新自由主義とも呼ばれる緩い商売慣習は廃れてしまったか。情報が入ってこないのが残念だ。


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