新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

バベルの塔

2017年05月07日 | 日記

 ブリューゲル「バベルの塔」を観てきた。上野、東京都美術館で展示されている。
 わずか1メートル四方ぐらいのキャンバスに大きな円錐形の塔を建設しようとして働く人たちとすでに住み着いているらしい人たち1400人ほどを描きこんでいる、との説明書きを読んでから観たが、実際の絵はあまりに細密で肉眼ではよく見えなかった。そばに展覧された拡大複製版や映像での説明で、なるほど微細に描きこんであることを確認した。1568年ごろオランダで使われていた重機や船が描きこまれている。
 いうまでもなくバベルの塔建設は聖書、創世記に登場する架空の話であり、紀元前の人びとの生活のようすを描き出すべきだったかもしれない。だがブリューゲルは自分が生きていた16世紀オランダのそれに置き換えて表現した。したがってバベルの塔のモチーフ以外、その風景も作業機材も、窓の装飾も人間の働きかたもすべて16世紀オランダのものになっている。
 人間たちが神を恐れず、神に近づこうと天まで届くほどの高い塔をつくろうとした。それがバベルの塔だった。それに対し、神が怒りをあらわにした。人間の言語が一つで互いに意思疎通ができるからこそそのように傲慢な考えをもつようになったのだと神は決めつた。そして塔をぶち壊すと同時に人間たちの言語をバラバラにしてしまった。それ以来、人間は何百、何千という異なる言語で生活し、互いに意思疎通するためには通訳がいる状態になっている。そうだ、日本にはバベルという名前を冠した翻訳学校があった。
 ところで世界の言語が多種多様であることについての説明はこれでできたとして、人種が同じように多種多様であることの説明は聖書ではどうなっているのだろうか。言語の多種多様は人種の多種多様に起源するのではないのか。すべての人間はアダムとイブから派生しているとする説にはちょっと無理がありそうだが・・。





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