新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

高度経済成長を実感したころ

2022年06月04日 | 日記

「エネルギーを噴出させると一気に駆け上がるものの、最後には歯止めが効かなくなったエネルギーの暴走により破滅する。」 
 保坂正康「近現代史からの警告」の一節だ。池田勇人首相の所得倍増計画に始まった日本の高度経済成長が、田中角栄の日本列島改造論の崩壊とともに終わったことを、みごとに集約したことばだ。日本の、あるいは日本人の特徴を的確に捉えている。
 保阪正康氏のこの著を自分の若いころを解きほぐす手段として、またウクライナ情勢に端を発する現在の日本の保守化傾向を憂えながら読んでいる。
 10歳のころ「中学校を卒業すれば働く」のが半ば常識だった。父は尋常高等小学校卒業の学歴しかなかったし、周辺にいた多くの友人たちにしても状況は変わりなかった。中学生になると「高校ぐらい出ておく」のがふつうになっていた。高校では国立大学進学を目指して一生懸命に勉強した。国立大学に進学できなければ就職するしかない、という考えが両親にはあった。大学受験に失敗し、1年間浪人した。すると「私立大学に進学しても経済的になんとかなりそうだ」と両親が言い始めた。当時、国立大と私大の学費の差は桁違いに大きかった。どうにか国立大学に合格し、兵庫の片田舎から東京に出てきて下宿生活を始めたときは、高度経済成長がゆたかに実を結んだ時期だった。この10年、両親の経済状態が時の経過とともに著しく改善されていったことをいまとなって実感できる。
「猛烈社員」「24時間闘えますか」などというキャッチコピーがあったほど、日本はしゃにむに働いていた。「エネルギーを噴出させると一気に駆け上が」った時期だった。
 そして日本列島改造論をひっさげた田中角栄総理誕生、オイルショック騒動からロッキード汚職で総理辞職、逮捕へとつながっていった。高度経済成長の時代はあっけなく幕を閉じた。「エネルギーの暴走により滅亡」した。このころがむしゃらに働いていたひとつ上の世代の実感を聞きたい。