ジェームズ・ミッチェナーの歴史小説でカリブ海諸国についての知識を蓄えている。これまであまりなじみがなかった地域、国ぐにだったが、700ページあまりを読み進み、かなりはっきりしたイメージを持つことができた。
キューバを含むほとんどすべての島がヨーロッパ列強の植民地になり、本国の政変にもろに影響を受けてきたこと、人種的にはアフリカから連れてこられた黒人奴隷とヨーロッパ諸国から渡ってきた白人とがさまざまな割合に混血をすすめながら、すこしでもより白人に近づこうとする力が働いてきたこと、カリブ海諸国の中心地がジャマイカであることなどを知ることができた。
ここでいうヨーロッパ列強とは、まずスペイン、その後イギリス、フランス、オランダが台頭する。イギリスでクロムウェルによる革命が起こると、イギリス歴代の王家に忠誠を誓ってきたジャマイカ島の人たちはたちまち処刑の嵐に巻き込まれる。フランス革命時にジャコバン党が政権を握ると、マルチニク島、ヒスパニオラ島のハイチでそれまで権力を握り、支配してきた人たちが処刑の対象になる。ギヨタンが発明したギロチンが使用された。Gillotinをフランス語読みすればギヨタン、英語読みすればギロチンになる。
カリブ海諸国では、現地の先住民族からの血を引く人種、アフリカから奴隷として連れてこられた純粋な黒人、それにヨーロッパの白人が混じり合い、ある段階では10種類以上のランクづけがなされ、純粋な白人、白人に近いものから黒人に近いもの、純粋な黒人までの社会階級が肌の色で決まってしまう。社会での成功をめざす人たちは、結婚によって子孫の肌の色をすこしでも白くしようと努力する。
カリブ海地域のなかで大学があるのはジャマイカだけのようだ。したがってカリブ海諸島で育った若者たちはジャマイカの大学へ進学することをめざして勉強に励む。とくべつに優秀で、宗主国であるイギリス、フランスなどにツテがある白人はそこの大学で学ぶことによって箔をつける。また現代では多くの若者がいちばん近い大国、アメリカの大学で学ぶことを選ぶようだ。とりわけフロリダ州は彼らにとってとても近く、たえず貨物便が往来している。
ところでジャマイカといえば陸上競技のウサイン・ボルトがいるし、野球のメジャー・リーグにも多くの選手を排出している。たしかレゲエで有名な歌手ボブ・マーリーもジャマイカ出身だった。やはりジャマイカはカリブ海諸国の文化の中心地を担っているのだろう。