新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

酒こそわが人生

2015年05月10日 | 日記

 「人生の中で、いちばん良いなあと思う瞬間。私の場合は、楽しい酒を呑んでいる時である。最近では、酒を呑むために生きているように感じている。」
 これは「酒こそわが人生」とおっしゃる石川文洋さんの著書の書き始めです。そのまま私自身にもあてはまりそうなので、思い出して読んでみました。
 石川さんは20代後半でベトナム戦争の取材をした、いわゆる戦場カメラマンとして多くのひとの記憶に残っています。アメリカ軍に従軍して銃弾が飛びかう危険な戦場を取材し、夕方サイゴンにもどってきて冷たいビールやコニャックソーダでのどを潤す。その酒のおかげで、翌日また戦場へ行こうという気力がわいてくる、という趣旨のことを書いておられます。命を危険にさらすほどの厳しい環境で仕事をしたあとの酒だから、味もひとしおだったでしょう。
 石川さんの著作を読んでいると自由業とはいえ、朝からビールをあおる、昼間立ち寄った先でちょっとビールを引っかける、などちょっと飲みすぎではないかと思える場面にまま遭遇します。そのせいかどうか因果関係は知りませんが、いまは体調を崩されているようです。
 おなじ写真家でも古びゆく大都会の面影を切りとるのがお得意とみえるチョートクさんも、かなり頻繁にアルコール飲料を口にされます。深酒はしないようですが、自由業の気楽さは私にはうらやましいかぎりです。
 著書「屋根裏プラハ」には、上質なチェコワインのお得さが書かれています。南モラビア産のワインを飲むなら、オーストリアのウィーンで飲むより国境を北へ越えたチェコで飲むほうが経済的です。チェコはまだユーロを使っていませんから、生活必需品の物価が相対的に低いのです。プラハ滞在中に国境近くにあるワインの産地ミクロフへ車をとばし、ワインをまとめ買いした経験が紹介されています。
 作家、吉村昭は歴史小説作家として取材旅行をよくしました。旅行先で一日の取材を終えるときまってその土地の居酒屋へ入ります。そのあとバーを数軒はしごしないではいられなかったようです。しかし酒自体のことをほとんど文章に書いていないところから、吉村は下戸だったのではないかと私は推測しています。酒が飲みたくてバーをはしごしたのでなく、人を求め、酒場の雰囲気を求めてバーをわたりあるいたのではなかったでしょうか。若いころ病気したり、仕事がうまくいかず苦労したせいで生き急いでいたふうがうかがえます。