新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

カモンイス、隻眼の詩人

2015年01月05日 | 日記

 ナザレの海岸でカメラを向ける私にウィンクしていた「彫像」は、右目を完全に閉じていたように記憶する。現存するカモンイスの肖像画は、すべて右目の視力を失ってからのものだが、右目が開いているようでも光沢がない。
 カモンイスが右目を失ったのは22歳ころセウタでモーロ人と戦っていたときだった。セウタとはアフリカ西部北岸のことであり、アラブ勢力すなわちイスラム教徒たちがポルトガル、スペインへ隙あらば入り込もうとしていた。ポルトガル側もレコンキスタの途上にあり、一刻も早くアラブ勢力をたたきつぶしておきたかった。ポルトガル王はたびたびアフリカ北岸へ軍隊を派遣する。そのような戦いの1つにカモンイスが参加したのだった。
 カモンイスは56歳で死亡するまでの24年間を隻眼で過ごし、隻眼で「ウズ・ルジアダス」を書きあげたことになる。