齢をとるにつれて興味、関心の幅が狭まるのか、新聞の書評欄を見ても食指をそそられる本がきわめて少なくなった。そんななか今日の書評欄で目を引いたのが男色という言葉がタイトルに入っている本だった。日本の男色をくわしく書き記した研究書らしい。
古代ギリシャにも男色はあった。
古代ギリシャの叙事詩「イリアス」はアキレウスの怒りを謡っている。アキレウスは念友パトロクロスをトロイア方に殺されたことに怒ったのだった。念友とはなにか。男色の相手のことだ。
ギリシャ、アカイアは小アジア沿岸の都市トロイアの繁栄をねたみ、攻撃した。文化ではトロイアが上、軍事力ではアカイアが上だったとみられる。トロイアは陥落した。アカイアが軍事力に任せてトロイアを落としたのだが、それを脚色して後世に語り伝えようと劇仕立てにしたのが叙事詩「イリアス」だったと高橋睦郎氏は書いている。
アカイア方を代表する勇敢な騎士アキレウスは、自らが仕える将軍アガメムノンのやり方を快く思わないために、トロイア征伐に腰を上げようとしない。そこへパトロクロスがアキレウスの鎧甲を借りて出陣する。トロイア方はアキレウスが攻めてきたと思いこみ、応戦する。パトロクロスは戦死した。念友を失い、怒りに燃えるアキレウスは、ついにトロイア方を攻める。なかでも勇猛果敢さにおいてはトロイアで一番であり、人格の高潔さにおいてもアキレウスに引けをとらないヘクトルを退治する。
話を念友に戻そう。古代ギリシャでは戦場に女性を連れて行けないために念友をもつことが奨励された、ということに高橋睦郎氏はさながらついでのように触れている。もうすこしくわしく知りたいものだ。