新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

アラル海が干上がった原因は?

2014年10月04日 | 日記

 アラル海が干上がったというニュースを読んで、石弘之「地球環境報告Ⅱ」(岩波新書)を読み直してみた。1998年にすでにアラル海は少なくとも5割は縮んでいた。著者は2020年までにアラル海は干上がるだろうとすでに予言している。干上がるのが意外に早かった。歯止めをかけるすべが見つからなかった、というべきか。
 原因は旧ソ連の国家プロジェクトにある。アラル海に水を注ぎ込む2つの大河の流域は1960年代まで完全な砂漠地帯だった。そこに灌漑設備をほどこして農地に変えた。2つの大河から大量に取水したおかげで綿花、コメ、トウモロコシなどが豊富にとれ、多くの人の胃袋をみたした。旧ソ連のプロジェクトは成功した。アラル海沿岸の漁業者たちは転職を余儀なくされたが、その程度の構造改革はやむをえないものと国家上層部は考えたことだろう。旧ソ連が崩壊したあとに、そのくびきをはずされた周辺国は話し合ったが、自国の農業生産が最優先され、アラル海問題は後回しにされた。
 かくして「中央アジアの真珠」はほとんど姿を消した。いまは塩分濃度がきわめて高い水がわずかに残った湖面を覆い、その周辺は塩をふくんだ砂漠になっている。今度はこの地域をどう開発するかを考えなければいけないが、かつて強力なリーダーシップをとった国はもはや存在しない。
 そういえば中国の黄河の水が激減したのも上流地域で農業生産のために大量の取水をしたからだった。農業は水なしではできないものか。