はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

死せる魔女がゆく 上・下 

2008-09-06 10:14:31 | 小説
死せる魔女がゆく 上 [魔女探偵レイチェル] (ハヤカワ文庫 FT ハ 5-1)
ハリスン キム
早川書房

このアイテムの詳細を見る


死せる魔女がゆく 下 [魔女探偵レイチェル] (ハヤカワ文庫 FT ハ 5-2)
ハリスン キム
早川書房

このアイテムの詳細を見る


「死せる魔女がゆく上・下」著:キム・ハリスン 訳:月岡小穂

 今世とは異なる歴史を辿った現代のアメリカ。遺伝子研究の末に生まれた致死性のウイルスの伝播で滅びかけた人類。それに台頭する形で裏世界から顔を出した妖精や妖魔など、神話や伝説上の怪物たち……通称異界人に属する魔女・レイチェル・モーガンは、異界人や魔法使いを取り締まる異界人による捜査機関・ISに勤めていた。才気溢れるレイチェルに回される仕事は、しかし何年経っても使い走りの域を超えないささやかなもの。しかも毎度毎度嫌がらせとしか思えないようなアクシデント付きで、上司のデノンからの叱責が絶えることはない。
 一念発起してISを退職。なぜかくっついてきた後輩の女吸血鬼・アイヴィと共同生活し、賞金稼ぎとして暮らしていくことに決めたレイチェルの身に、謎の殺し屋や、裏のある大富豪の魔の手が伸びる……。

 米国産ライトノベル「ホローズ」シリーズの第1作。スレンダーボディの可愛い魔女が主人公、といっても米国産だけにそこは肉食系。日本のように萌えだのデレだのぬるい属性はついてこない。タフな魔女が男顔負けの格闘術や根性を駆使してターゲットを追い詰める。そこに蝙蝠の翼やネズミの毛を煮込む黒魔術の陰気性を加えた結果、オリジナリティ溢れる作品に仕上がったという感じ。
 レイチェルの周りを賑やかすキャラもことごとく魅力に溢れている。1年365日やかましい子沢山の相棒ピクシー・ジェンクスと、その出来すぎた妻・マタリーナ。レイチェルの首筋に齧り付きたい衝動と必死に戦う絶世の美貌の女吸血鬼・アイヴィ。ミンクに変身したレイチェルとネズミ格闘技で激戦を繰り広げた好青年・ニック(人間)。謎だらけの隣人・魔法使いのキースリー。 
 ひたすらにレイチェルの身の安全を思うアイヴィの行動が面白い。捕食者と獲物の関係を越えた、肉感的で百合的な友情? 愛情? とにかく強い衝動があるのが見て取れて楽しい。平静を装いながらも内心アイヴィを恐れているレイチェルの頑張りも良い。翻訳物にしては読みやすいのもマル。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿