はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

エンバーミング (1)THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN

2008-09-09 20:10:20 | マンガ
エンバーミング 1―THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN (1) (ジャンプコミックス)
和月 伸宏
集英社

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 189X年。大英帝国ハイランド地方。
 落雷の電流量、推定1.21ジゴワットオーバー。気温・寒冷0℃アンダー。
 全て条件は整っている。これでまた、どこかで人造人間(フランケンシュタイン)が造まれる……

「エンバーミング (1)THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN」和月伸宏

「るろうに剣心」から幾星霜、和月伸宏がようやく殻を破った。「友情」でも「努力」でも「勝利」でもない、清さからも正しさからも美しさからも乖離した「狂気」と「殺意」の物語の舞台は、19世紀後半の大英帝国。吹雪の中立ち往生した馬車の乗員が、謎の巨人の手によりなぶり殺しにされたところから始まる。
 大殺戮から生き残った3人の子供はワイス卿の庇護の下、健やかに育っていた……とはお世辞にもいえない。唯一の女の子のエーデルはワイス卿の養女として大事に育てられ、また当時の記憶を失っているために素直な少女に育ったものの、ヒューリーとレイスはワイス卿の猟場番(ゲームキーパー)として大自然の中で智勇を鍛えながら、ひたすらに殺意を醸成させていた。
 ようやくあの時の仇の居場所を突き止めたヒューリーとレイス。万全の武装を整え、吹雪の中決戦を挑むも脆くも敗れる。レイスは体を両断され、ヒューリーは喉元を切り裂かれ、全ては終わったかに見えた。しかし皮肉な運命の歯車は勢いを増して、今まさに回り始めたところだった……。

 感心した。というとおこがましいけども、本当にそんな気持ちだ。ジャンプ的な少年漫画しか描けなかった和月の成長に驚いた。主人公以外のメインキャラのほとんどが死を免れないなんていう話がこの人に描けるとは思っていなかった。
 容赦のなさに加え、なんといっても主人公のキャラが良い。ヒューリーを突き動かすのは人造人間と人造人間を造った者への殺意のみ。狂った復讐者が叫ぶのは友情でも愛情でもない。それらを触媒に化学反応した衝動のみ。「殺す!」を連呼する主人公なんてなかなかお目にかかれない。
 舞台背景はいまいち。いかにも資料を見て描いた風で、猟場番という設定なんてまったく生かされていない。幕間のキャラ同士の対話で当時の雰囲気を補足するのも手抜きだろう。漫画家なら漫画で(作中でなくてもおまけ漫画として)描いてほしいものだ。

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