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 岸田文雄首相が沖縄への新型コロナウイルスまん延防止等重点措置の適用を決めた。玉城デニー知事は今後、緊急事態宣言に踏み切る可能性にも言及。新規感染者数千人の大台が目前に迫り緊迫感が漂う。一方、重点措置の適用3県で唯一、酒類提供の停止に踏み込まず、ワクチン接種率も全国最低水準の沖縄県に対し、政府内からは冷ややかな視線も注がれる。(政経部・大野亨恭、又吉俊充、下地由実子)

 「さまざまな場面で非常に厳しい状況を強いられるだろう」。知事は6日の会見で険しい表情を見せた。

 1日52人、4日225人、5日623人-と感染者は増加の一途だ。知事は「とにかく早い取り組みが重要だ」と重点措置に踏み切った理由を説明する。

 新規感染者数の激増に政府も危機感を強めている。ただ、政府内には県の姿勢を疑問視する声もある。

 県が提供自粛に踏み込まなかった酒類に関しては、昨年5月の重点措置下でも政府は疑念を抱いた。国に緊急事態宣言の適用を求めつつ酒類提供を継続したことに当時の菅義偉首相らは「後手だ」といら立った。

 さらに、ワクチン接種記録システム(VRS)ベースで2回の接種率は68・47%(4日時点)。7割に届かないのは全国で沖縄だけだ。松野博一官房長官から接種率の低さを指摘された西銘恒三郎沖縄担当相は5日、記者団に「あまりにひどすぎる」と非難。国政与党議員の一人は「知事の責任を追及せざるを得ない」と批判を強める。

 こうした声に県幹部は「飲食業界を考えれば現段階での酒類禁止は現実的ではない」と言い切る。普段、知事と距離を置く保守系市町村長の一人も「事業者は従業員を抱えておりやむを得ない」と理解を示す。知事側近は「経済活動にとって重点措置は十分な急ブレーキ」と反論する。

 ただ、ワクチン接種率は伸び悩んだままだ。さらに、3回目の接種を控える離島からは、感染拡大により「接種に当たる医療従事者を確保できるのか」(自治体関係者)と新たな懸念も生まれている。

 県幹部は2月に北部、中部にも広域接種センターを増設することを明かし「若者への接種呼び掛けを継続する」と取り組み強化を掲げる。一方、米軍から感染急拡大の要因となった変異株「オミクロン」の流出を許したことに対し国の責任を問う声も根強い。6日に米側へ行動制限などを要請した林芳正外相の動きを、県首脳は切り捨てた。「いつものことだが、遅すぎる」