露、北方領土を「特区」指定 日露関係、さらに悪化へ
ロシアのプーチン大統領は9日、ロシアが不法占拠する北方領土を含むクリール諸島(北方領土と千島列島の露側呼称)に進出する国内外の企業を対象に、所得税などの各種税を原則的に20年間免除する法案に署名し、発効させた。ロシアは北方領土を事実上の「経済特区」として企業を誘致し、実効支配を強める思惑だ。 同法案に対し、日本は北方領土での共同経済活動を目指すとした日露合意に反するとして抗議してきた。一方、ロシアはウクライナ侵攻で日本が対露制裁を発動したことに反発。7日には、自国通貨ルーブルによる外貨建て債務の返済を認める「非友好国・地域」のリストに日本を含めた。 日露関係は極端に悪化しており、日露平和条約交渉の先行きは極めて不透明となっている。 北方領土への特区設置案は昨年7月、ミシュスチン首相が訪問先の北方領土・択捉(えとろふ)島で表明。プーチン氏も支持した。露政府が法案を作成し、今月4日までに露上下両院で可決されていた。
門倉貴史 認証済み
| エコノミスト/経済評論家報告
ロシアが北方領土を経済特区に指定して免税措置をとったとしても、特区に進出する外資系企業は皆無に等しいとみられる。ロシアで事業展開することのリスクと免税によるコスト削減のメリットを比較すればリスクのほうがはるかに大きいからだ。
ロシアは撤退した企業の工場を国有化も検討しているが、ロシア側に十分な技術がないため、工場・生産設備を有効活用することはできないだろう。また、工場を国有化すれば、主要国による経済制裁が一段と厳しいものになり、ロシア経済は大きなダメージを受ける。さらに工場を国有化をすれば、国際的な信用失墜を招き、将来の長い期間にわたって外資系企業のロシアへの進出は見込めなくなる。ロシアは世界のイノベーション(技術革新)の恩恵に浴することができなくなり、国力の衰退は免れないだろう。
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