国語の問題。
次の表現は○か×か。
問一:激しく怒ることを意味する慣用句は「怒り心頭に『達する』」
これは×で、間違った表現。
正しい表現は「怒り心頭に『発する』」だと言う。
そう言われて見ると筆者もいささか自信を失いかけるが、間違った人が74・2%もいることが判り一先ずホッとした。、(二十六日、「文化庁の国語に関する世論調査」)
間違った人がほぼ四人に三人に上るという。
赤信号、皆で渡れば怖くないという例のヤツだ。
文化庁国語課は「怒り心頭に達する」が七割以上に上ったことについて「こんなに多いとは思わなかった。心頭の『頭』は、『そのあたり』という意味だが、普段使わないので『頭にくる』という言葉にひっぱられたのでは」と分析している。
そう言われても心頭の『頭』は、『そのあたり』という意味だと判る人は果たして何人いるのか。
≪心頭(しんとう)を滅却すれば火も亦(また)涼し≫
昔の人はクーラーが無くとも風鈴の音で涼を感じた。
無念無想の境地に至れば、火も熱くは感じなくなる。
夏の暑さくらいなんだ! 渇!
だが、待てよ。 ここでも心頭とは「心と頭」では無く「心のあたり」だったのか。
昔から若者と老人は言葉については仇同士であった。
老人:「最近の若者は言葉の使い方を知らん!」
若者:「言葉は時代と共に変化するのだ!」
どちらの言うことも有る意味では正しい。
言葉が時代と共に変化した例。
昔の食事は主食(米、粟、稗、芋等)と一汁のみ(味噌汁等)だけだった。
味噌汁等の吸い物は主食に対して「付け」と言った。
それに「お」がついて「お付け」。
時代と共に「おつけ」が味噌汁の普通名詞と変化して「お」をつけると「おお付け」。
これではおかしいので「お」を御(み)と読んで「御お付け」。
さらに時は流れ「みおつけ」が再び味噌汁の普通名詞化する。
それに「お」が付く。 そして目出度く「おみおつけ」の誕生となる。
「御お御お付け」になるのはいつの日だろう。
「ミオミオ付け」?
しかしナニ、・・・いや、何にでも「オ」を付ければ良いってもんじゃない。
ナニにオを付けてどうすするつもりだ。
*
「国語に関する世論調査」は「お」を付ける言葉、付けない言葉についても調査している。
お菓子、お酒、お米は多数派で、
おくつした、おビール、おかばんは少数派。
「お」は尊敬語・謙譲語・丁寧語に続く第四の敬語とされる。
「お」を付けると物言いを丁寧で上品にする働きがある。
「お」を付ける人の方が多かったのは菓子などのほか皿・弁当・茶わんの6語。
付ける人が少なかったのは、くつしたなどのほかソース・紅茶・手紙・薬・天気の8語。
酢はほぼ同じ割合だった。
どの言葉でも、付けるのは女性が男性より多かった。
中でも弁当は女性の76.4%が「お弁当」なのに、男性は24.1%にとどまった。
*
昔の山口県のある村。
主婦は下女に言葉に「オ」をつけるように申しつけた。その結果。
「オクサマ、オ米(こめ)櫃(びつ)のオ米をオ洗っておきましょうか」。
これでは煩わしいことこの上ない。
それで、今度は「オ抜き」に戻るように命じた。
主婦が下女を呼んだ。
「クサマ何でござりましょうか」。
主婦が問いただした。「クサマとは何だね」。
「ハァ、オクサマのオをとったので」。
主婦が問う。
「ところで豆はどこにいれてあるかね」。
下女が応じる。「はァ、豆はケの中にあります」
以上は河北新報よりの孫引き(宮本常一・岩波文庫『忘れられた日本人』)
◇
「お」が付くか付かないかで意味の変わる言葉。
「おたま」は 「御玉杓子(おたまじゃくし)」の略。
「たま」は数ある意味の中でも「美しい女性、転じて芸者・遊女」の意味がある。(例:上玉) 男性の金玉の略称でも有る。
「八つ」は昔の午後三時。
「おやつ」は午後三時の「おやつ」。
「おひや」を頼めば水がくる。
「ひや」を頼めば酒がくる。
「にぎり」と「おにぎり」は別物である。
「ビール」は家庭で飲むもの。
「おビール」は紅灯の巷で美女を侍らして飲むもの。
「ビール」と「おビール」は似て非なるモノ。
何所が違うかって? 値段が違う!
ところで、「おかま」と「かま」の違いは?
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