住宅で見つかった銃弾のようなもの=沖縄県金武町伊芸(沖縄防衛局提供)
米軍基地キャンプ・ハンセン(沖縄県金武(きん)町など)に近接する住宅で7日に見つかった銃弾らしきものが、地域に波紋を広げている。米軍による射撃訓練の流れ弾の可能性がある一方、弾がさび付いているなど不審な点が多く、何者かが偽装した疑いもあるからだ。沖縄では米軍絡みの事件・事故が大きな政治問題になりやすい。流れ弾か、偽装工作か-。県警が慎重に調べている。
【写真】銃弾のあった住宅の勝手口
■強まる米軍批判
県警や沖縄防衛局などによると、銃弾らしきものが見つかったのはキャンプ・ハンセンから最短で約330メートル離れた金武町伊芸の住宅。6日午後2~4時、住人が「パリン」という音を聞き、夜になって勝手口のドアガラスが割れていることに気付いた。翌日に調べると、ガラスと網戸の間に弾が1個落ちているのを発見。知人の町議を通じて役場などに連絡した。けが人はいなかった。
ハンセン内の施設では4~10日、米軍が実弾射撃訓練を行っており、沖縄防衛局が事前に県などに通知していた。 このため地元メディアは「民家に流弾か」「基地隣接、続く恐怖」「米軍に不信募る」などと大々的に報道。革新勢力なども批判を強め、野党国会議員でつくる団体が沖縄防衛局に対し、原因究明までは米軍の訓練を中止するよう求める事態になった。
■不自然な現場
弾は県警が押収し、器物損壊などの疑いも視野に捜査している。しかし現場では、当初から不審な点がみられた。 関係者によると、弾は長さ約4~5センチ、直径約1センチで、さびがあるなどかなり腐食していた。また、勝手口の前にはブロック塀などがあり、外からの流れ弾なら貫通したはずだが、痕跡はなかった。 ガラスの割れ方も不自然で、2枚の複層ガラスのうち外側だけが割れていた。銃弾ならば粉々になるか、放射線状のひびなどができるのに、そうした形跡もなかった。 このため何者かが住宅の敷地に侵入してガラスを割り、弾を入れた可能性もあるという。 当時は参院選の最終盤で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する無所属現職と、容認する自民新人が激しく競り合っていた。自民新人が僅差で敗れたが、「原因が分からないまま米軍の危険性が大きく報道された。仮に選挙に影響したとしたら問題だ」と自民党関係者は話す。
■過去に被弾事案も
沖縄では過去に米軍訓練の流れ弾とみられる被弾事案があり、住民らが不安に思っているのも確かだ。 現場付近でも平成20年、駐車中の乗用車のナンバープレートに弾丸が突き刺さっているのが見つかり、県警が軽犯罪法違反容疑で被疑者不詳のまま書類送検する事案があった。 付近の住民女性(62)は「訓練中は夜でもダダダダと銃声が響く。今回のようなことがあると、とても不安だ」と話す。 一方、今回の問題について米軍当局は8日、「射撃訓練の場所などを点検し、全ての安全対策を備えていることが確認された」とするステートメントを発表。「古く腐食した銃弾が、(米軍の)どの火器からも発射されたはずがない」と否定している
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