狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

沖縄の戦後史を歪めた「集団自決」と大江岩波訴訟

2023-11-23 13:02:43 | 資料保管庫

 

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760「大江岩波「集団自決」訴訟」、最高裁判決へのアンチテーゼ

江崎 孝

沖縄を歪めた戦後史の大ウソ

~『沖縄「集団自決」の大ウソ』~発刊をめぐり~

江崎 孝 (ブロガー:「狼魔人日記」管理人)

沖縄の祖国復帰以来、約半世紀経過した。 だが現在も沖縄には、「米軍基地問題」「沖縄戦」という二つのタブーがある。

そこで、本稿では、8年前の「集団自決」を巡る最高裁判決で被告の大江健三郎・岩波書店側が勝訴して以来、一件落着と思われている沖縄戦の「集団自決」問題について検証して見る。

大江健三郎・岩波書店「集団自決裁判」とは、元沖縄戦戦隊長および遺族が、大江健三郎・岩波書店を名誉毀損で訴えた裁判のことである。

沖縄戦の集団自決について、事実関係はこうだ。

岩波書店発行の書物『沖縄ノート』(著者:大江健三郎 発行:1970年)に、当時の座間味島での日本軍指揮官梅澤裕元少佐および渡嘉敷島での指揮官赤松嘉次元大尉が住民に自決を強いたと記述され、名誉を毀損したとして梅澤裕氏および赤松秀一氏(赤松嘉次の弟)が、名誉毀損による損害賠償、出版差し止め、謝罪広告の掲載を求めて訴訟を起こした。本訴訟は最高裁に縺れ込んだが結局、2011421日、最高裁は上告を却下。被告大江側の勝訴が確定した。

■沖縄タイムスの印象操作

ここで約20数年前の最高裁判決を巧みに印象操作し続けている新聞がある。 その新聞こそ、「集団自決軍命説」の発端となった『鉄の暴風』の出版元沖縄タイムスである。

印象操作報道の一例として、直近の2023年5月29日付沖縄タイムスは大江・岩波「集団自決」訴訟の最高裁判決について次のように報じている。

《沖縄戦時に慶良間諸島にいた日本軍の元戦隊長と遺族らが当時、住民に「集団自決」するよう命令はしていないとして、住民に命令を出したとする『沖縄ノート』などの本を出版した岩波書店と著者の大江健三郎さんに対する「集団自決」訴訟を大阪地方裁判所に起こした。国が07年の教科書検定で、日本軍により「自決」を強制されたという表現を削らせきっかけになる。11年4月に最高裁への訴えが退けられ、元戦隊長側の主張が認められないことに決まった。(敗訴が確定)》

沖縄タイムスの主張を要約すれば、「『集団自決』は軍の命令ではないと主張する元軍人側の主張は、最高裁で否定され大江健三郎・岩波書店ら被告側の『集団自決は軍命による』という大江・岩波側の主張が最高裁で確定した」ということだ。

だが、事実は違う。

沖縄タイムスは、戦後5年米軍票から米ドルに通貨を切り替えるという特ダネと交換条件で、1950年に米軍の広報紙として発行された。

以後同紙編著の『鉄の暴風』は沖縄戦のバイブルとされ、同書を出典として数え切れない引用や孫引き本が出版され続けてきた。

しかし残念ながら元軍人らによる大江岩波集団自決訴訟は敗訴が確定し、集団自決問題は国民・県民の記憶から遠ざかりつつある。

このように、大江岩波集団自決訴訟で被告大江岩波側の勝訴が確定し国民の「集団自決」問題が一件落着した思われている今年の9月、筆者は『沖縄「集団自決」の大嘘』と題する書籍を出版した。

さて、すでに決着済みと思われている沖縄戦「集団自決問題」に今さら本書を世に問う理由は何か。  

その訳を述べよう。

確かに沖縄の集団自決問題は「大江岩波訴訟」で、その結果すでに決着済みと思われている。

この現実を見たら、多くの国民や沖縄県民は、沖縄タイムス編著『鉄の暴風』が主張する通り「軍命論」で集団自決論争は結着したと考えても不思議ではない。

だが、岩波大江訴訟で確定したのは、「軍命の有無」ではない。最高裁判決は大江健三郎と岩波書店に対する名誉棄損の「損害賠償請求の免責」という極めて平凡な民事訴訟の勝訴に過ぎない。

肝心の「軍命の有無」については、一審、二審を通じて被告大江側が「両隊長が軍命を出した」と立証することはできなかった。  

その意味では原告梅澤、松ら両隊長の汚名は雪がれたことになる。しかし沖縄タイムス等反日勢力は問題をすり替え、あたかも両隊長の「軍命」が確定したかのように、次の目標として「軍命の教科書記載」を目論み、あくまでも日本を貶める魂胆だ。

ほとんどの国民が集団自決問題を忘れた頃の2022年710日付沖縄タイムスは、こんな記事を掲載している。

《「軍命」記述を議論 9・29実現させる会 教科書巡り、2022710

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」を巡り、歴史教科書への「軍強制」記述の復活を求める「9・29県民大会決議を実現させる会」(仲西春雅会長)の定例会合が4日、那覇市の教育福祉会館であった。3月の検定で国語の教科書に「日本軍の強制」の明記がされたことについて意見を交換。社会科の教科書で記述の復活がないことから、今後も活動を継続していく意見が相次いだ。》

■歴史は「県民大会」が決めるものではない

2007年春、文科省は歴史教科書から「集団自決は軍の命令で起きた」などの文言を削除するよう検定意見を出した。これに対し沖縄県内外のサヨク活動家たちが反発して同年9月29日「教科書検定意見の撤回を求める県民大会」が開かれ、政府に抗議の拳を突き上げた。特に沖縄メディアが連日大々的に扇動記事を書いて、県民を反日運動に誤誘導した。(実際は、1万数千人の動員数を11万人余と大巾水増しした報道でのちに「11万人大幅水増し集会」と言われた)

「軍命」が教科書に記述されたとしたら、国が歴史として認めたことになる。だが歴史は裁判が決めるものでも無ければ、沖縄タイムス等の新聞が決めるものでもない。ましてや、サヨク活動家たちが主催する「県民大会」で決めるものではない。

■「『沖縄集団自決』の大ウソ」を世に問う目的

『沖縄「集団自決」の大ウソ』を世に問う第一の目的は、沖縄タイムス編著の『鉄の暴風』が歪曲した沖縄戦歴史を正し、「残酷非道な日本軍」を喧伝する沖縄タイム史観の教科書記述を阻止することである。最高裁による確定後、歴史の是正を巡る状況はさらに新たな展開があった。

 『鉄の暴風』が主張する「軍命論」を粉砕する決定的証拠が出てきたのだ。 仮にこの証拠が大江岩波訴訟の前に登場していたら、裁判の判決も逆だった可能性すらある。沖縄戦遺族会のご協力により、集団自決の「軍命論」を葬り去る定的証拠を入手することが出来たのだ。

これまで「軍命論争」には、「手りゅう弾説」~大江健三郎の「タテの構造説」など数多くの証拠、証言が論じられた。その中で「援護法による軍命説」は、法廷では一つの推論に過ぎず決定的ではないと言われ、証拠として採用されなかった。

■「援護法のカラクリ」が暴く軍命の大ウソ

「戦闘参加者概況表」(裏の手引書)

ところが「援護法と軍命のカラクリ」を一番熟知する沖縄戦遺族会から決定的証拠を提供していただいた。 「軍命が捏造であることを示す」県発行の「戦闘参加者概況表」(裏の手引書)である。

この証拠を事前に入手していた「軍命派」の研究者達が、「軍命を捏造した」と白状し、さらに証拠の捏造に「恥を感じる」とまで言い切っている。これ以上の決着はないだろう。この一件こそが本書を世に問う最大の目的である。

次に「『沖縄集団自決』の大ウソ」を出版するもう一つの目的を述べておこう。

本書に収録の記事のほとんどは、約20年間ブログ『狼魔人日記』で書き綴った記事を編集したものである。だが、何事にも終りがある。

ブログ『狼魔人日記』の継続に終りが来た時、収録されて記事は広いネット空間に放り出される。 そして、そのほとんどが人の眼に触れる機会もないだろう。

古来、歴史とは文字に書かれ事物・事象が歴史として刻まれるという。 その伝で言えば、ネット上の記録など歴史としては一顧だにされないだろう。

ネット上の記録を紙に書いた記録にする。これが本書出版のもう一つの目的である。

 

■「梅澤隊長の不明死」、目に余る『鉄の暴風』の誤記

赤松隊長は言うまでもなく梅澤隊長に関しても事実無根の記述が並んでいる。梅澤隊長が駐屯した座間味島での戦闘について、こう記述しているだ。
「日本軍は、米兵が上陸した頃、二、三カ所で歩哨戦を演じたことはあったが、最後まで山中の陣地にこもり、遂に全員投降、隊長梅沢少佐のごときは、のちに朝鮮人慰安婦らしきもの二人と不明死を遂げたことが判明した」と。

だが事実は違う。梅澤隊長は勝てる見込みのない戦いで、部下104名中、実に70名が戦死したのだ。生者はわずか34名にとどまる。また梅澤隊長は慰安婦と情死したのではない。梅澤氏氏はご存命で、大江岩波裁判では法廷で証言している

『鉄の暴風』のこの種の出鱈目や明白な間違いは、その後『鉄の暴風』1980年度版から何の謝罪も断りもなく密かに削除されている。

■大江岩波訴訟、歴史判断を逃げた裁判長発言

そもそも集団自決論争のような歴史認識を問う問題は、裁判という司法の場には馴染まない。何故なら裁判官は、法律の専門家ではあっても、歴史の専門家ではないからだ。

事実、大江岩波訴訟で争われたのは、集団自決における「軍命の有無」を争ったのではない。 争われたのは原告側の名誉棄損による損害賠償請求など、民事訴訟ではよくある極めて平凡な損害賠償請求だった。

結局、大江被告が『沖縄ノート』の根拠にした『鉄の暴風』についても、その内容が事実誤認に満ちていると知りつつも「資料価値は否定できず」と評価し「当時の沖縄戦の研究レベルでは、大江被告が『鉄の暴風』の内容を真実と信用しても可笑しくないと言う法律概念「真実相当性」を強引に適用して大江被告の名誉棄損を免責する根拠にしている。

誤った歴史が教科書に載ることはあってはならない。

拙書『沖縄「集団自決」の大ウソ』の読者の皆さんは印象操作に惑わされず、真実を追求して欲しい。拙著がその一助になることを願っている。

■奇妙キテレツな裁判長発言

大江岩波訴訟の大阪高裁判決で、特に奇妙奇天烈な部分は小田裁判長の次の文言だ。

《このような歴史的事実の認定については、(中略)本来、歴史研究の課題であって、多くの専門家によるそれぞれの歴史認識に基づく様々な見解が学問の場に於いて論議され、研究され蓄積されて言論の場に提供されていくべきものである。司法にこれを求め、仮にも『有権的な』判断を期待するとすれば、いささか、場違いなことであるといわざるを得ない」(判決124頁)》

原告及びその支援者は本裁判の判断に「沖縄戦の真実」をゆだねたわけでない。

しかしこの判決文程、裁判長が自分の本音を正直に吐露した例を、筆者は寡聞にして知らない。小田裁判長は、歴史認識の問題を司法の場に持ち込まれ狼狽して,「場違いで迷惑」などと裁判長にあるまじき本音を吐いてしまった。

おそらく、心の内では次のように考えたのであろう。

「半世紀以上も前の歴史的事件は歴史家に委ねればよい。いまさら場違いな裁判所へ持ち込まれても、迷惑至極だ」などと。

結局小田裁判長は軍命論争のような歴史認識の判断を避け、歴史専門家に判断を求めた。

現代史家秦郁彦氏の判断

では小田裁判長のいう歴史の専門家はこの判決をどう見ているのか。

集団自決論争でも自身が座間味、渡嘉敷両村を訪問し現地調査した経験のある現代史家秦郁彦氏が小田判決文にどう考えたか。

秦氏は、自著『沖縄戦「集団自決」の謎と真実』(PHP研究所)で、高裁判決について「『傍論』だらけの高裁判決」という小見出しを設け、大江氏ら被告側に勝訴を与えた判決の理由について次の三点に集約している。ちなみに秦氏著『沖縄戦「集団自決」の謎と真実』は筆者(江崎)も共著者の末席に名を連ねているのでご参照ください。

➀ノーベル賞作家への配慮

日本では半ば神格化したノーベル賞作家大江氏の著作が発行停止になれば、内外の大反発を招き、「文化・芸術の敵」呼ばわりされるのを裁判官が恐れたというのだ。 大江氏自身は現地取材は一回もせず事実誤認の多い『鉄の暴風』を鵜呑みにした論評は、「真実相当性」で免責される。 その一方で自分の足で現地取材をして裏どり取材に徹した『ある神話の背景』の著者曽野綾子氏は、大江氏の名声の代償として「偏向したフィクション作家」とランク付けされてしまう。

➁沖縄県民への遠慮

大江氏の名声が、裁判官の判断を萎縮させたのは事実だが、教科書検定意見に対する沖縄県民の反発への遠慮も裁判官の判断を狂わせた。

2007年春の教科書検定で、文科省は歴史教科書から「軍の命令で起きた集団自決」などの文言を削除するように指導した。これに対し沖縄県内外の活動家たちが反発して「教科書検定意見の撤回を求める県民大会」が開かれ、特に沖縄メディアが連日大々的に扇動記事を書いた。(実際は、1万数千人の動員数を11万人余と水増しした報道でのちに「大巾水増し11万人集会」と皮肉られた)

大江岩波訴訟でも、裁判の度に大阪地裁や大阪高裁に多数の沖縄県民が押しかけ、それを応援するマスコミの熱気と圧力に裁判官が怯んで判決に手心を加えたと言われても可笑しくはない。 

裁判長が集団自決のような歴史問題は、歴史学者の論争に委ねるべきと司法判断を歴史学者に丸投げした上に「ノーベル賞作家に忖度」や「沖縄県民の反発に遠慮」があるようでは、原告敗訴は不可避だったのだろう。

ただ、大江岩波訴訟が世論に与えた悪影響は、裁判そのものより法廷外の「場外乱闘」が大きかった。

裁判の原因である『沖縄ノート』が沖縄タイムス編著『鉄の暴風』を根拠にしているため、沖縄タイムスは社運をかけて被告側支援の世論を煽り、ほぼそれに成功した。 沖縄タイムスは裁判の勝訴を、あたかも「梅澤・赤松両隊長が集団自決の命令をした」と確定したかのような歪曲報道を連日たれ流している。完












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