井上成美(しげよし)海軍軍人、ラディカル・リベラリスト。
米内光政と共に日米開戦に反対し終戦工作に尽力。
海軍兵学校校長の時の指導が素晴らしい。
抜粋
戦後訪れた教え子にこう語っている。
「私はガリガリ勉強することを決して軽蔑しません。ただ、何のために勉強するのか、それを考えねばならん。自分の実力を上げるためであって、席次を上げるためであってはならない。(中略)百人のクラスで百番になったとしても、全員が実力があって、百番ですら良い成績であれば、なんら恥ずべきことではないんです。”鶏口となるも牛後となる勿れ”という言葉があるが、私のはその反対で、できないクラスの鶏口よりも、できるクラスの牛後の方が良いと考えるのです」
偉人英雄の言行を無批判に真似ることの危険を指摘することも忘れなかった。そして「見ノ程モ反省セズニ、枝葉ノ言行ノミヲ真似ル様ナコト」をするなと戒め、「崇拝スル人ノ精神ニ沿ハンコトヲ努ムベシ」と結んだ。
戦後、横須賀の長井の自宅で英語塾を開くのであるが、この教育がまた素晴らしい。
語学を通しての人間教育である。
塾生のエピソード
英語塾の男生徒は、学校の運動場の一つしかない水道口で、同じ井上塾の女生徒とかち合い、「アフター・ユー」(お先にどうぞ)とやって女生徒を喜ばせたという。
戦争軍人としての識見・活躍も素晴らしいものですが、86年の生涯すべてが魅力的です。
特に戦後の暮らしはこの本を読んでいて涙で目が曇り読み進めることが大変でした。