「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

災害図上訓練DIGのセミナーのあり方(その3):互助の具体的な行動イメージを持っているか

2014-11-20 23:35:42 | DIG
引き続き、先週の「ふじのくに防災士」養成講座でのDIGセミナーを振り返りつつ、
DIGセミナーに求められる地域防災のプログラムについて、もう少し述べてみたい。

被害の様相をイメージさせること、すなわち、

「地震大国日本であれば、どこで起きてもおかしくないレベル」として震度6強の揺れを設定し、
その揺れを喰らったらどのような被害状況になるのか、をイメージさせること。

(地図遊びではない)DIGは、まずはそのようなプログラムから始めたい、
ということを昨日述べた。

その次に、己が取るべき行動について、しっかり自己イメージが出来ているかを問うてみたい、
というのが、昨日述べたことの2つ目の大きな柱である。

自分が果たすべき役割のイメージが、頭の中にしっかりとあるかどうか。
それを箇条書きの形で書き出させ、その項目の質と量で適確かどうかを判断させる、
そのプログラムも追求していきたい、と思っている。

大規模災害時に一体何をしたらよいのか。
真剣に考えたこともない、というのが、世の中の大多数なのかもしれない。
(まぁ、日々災害のことを考えて過ごさなくてはならないのは不幸なことであり、
真剣に考えずに済む状況にあることを感謝しなくてはならないのだが……。)

ともあれ、だからこそ、(震度6強の揺れでできる訳もない)教科書通りのことを書くか、
あるいは、3分という検討時間を与えても、2つか3つの項目で終わってしまうものなのかもしれない。

また、真剣に考えたことがないからこそ、
「自助」「互助(共助)」「公助」という言葉は、言葉として知っているかもしれないが、
その言葉が一体何を意味するものなのか、具体的な行動イメージとしては持っていない、
というのも、ままある話なのかもしれない、とも思う。

もちろん、それであっては困るのだが……。

最近ではあまり聞かなくなったように思っているが、
一時期、ロールプレイング型図上訓練がもてはやされていた。
「旅の坊主」は、その傾向を冷ややかな目で見ていたし、今もそうである。
訓練参加者が全員、己の役割イメージを具体的に持っているならば、どうこう言う気はない。
しかし、ほとんどの事例において、訓練参加者の圧倒的多数は、災害時に己が果たすべき役割を考えたこともない。
だからこそ「災害時に何をすればよいか、この訓練でわかりました」というコメントが、
恥ずかしげもなく出てくる訳である。

大規模災害時に、己が仕切り役にならなくてはならない行政職員ですら、この体たらくである。
とすれば、一般市民においては一体どうなることやら、であろう。

一般市民向けにDIG2015(仮称)を展開させる上では、
自助は当然のこととして、互助(共助)が具体的にイメージ出来ているかどうか、
この問いを、チェックリストをぶつける形で問うてみたい、と、思っている。

「大規模な地震が発生した時、あなたが果たすべき役割を具体的に書き出して下さい。」
「自分と家族に特段の被害がなければ、という前提条件はつきますが」
「その中に、○○(注:互助・共助の具体例)について言及してあれば○、そうでなければ×。」
といった具合でのワークの進め方を考えている。

つまり、「互助の具体的な行動イメージを持っているか」、あるいは、
「互助という言葉の具体的な中身を行動イメージとして持っているか」という設問である。

もちろん、まずもって追求すべきは、「予防に勝る防災なし」である。
家がつぶれることのないよう、自宅の耐震性をどこまで高めておけるか(という予防)が
自助のもっとも重要なポイントである。だが、それはそれとして。

互助(共助)として何をやらなくてはならないか、己の役割にしっかり気付いてもらいたい、と思っている。

自分と家族が無事だったならば、捜索救助用の資機材を持ってまちなかに飛び出せ!

そういう主張が当たり前に受け入れられるようになるまで、
この種の「被災のイメージ作り&己の災害初動対応のイメージ作り」のプログラム、
落とすことは出来ないはずなのだが、と、思っているのだが……。

みな、なぜ、互助(共助)の重要さを語りつつも、
その具体的な中身(行動イメージ)や必要な装備品等について、触れないのだろう。
また、それらをイメージさせるようなプログラムを持っていないのだろう……。


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