「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

10月期「ふじのくにDIGセミナー」開催報告

2015-10-10 23:50:13 | 地域防災
毎月第2土曜日は、静岡県地震防災センターでの「ふじのくにDIGセミナー」の日。

今月は「旅の坊主」を含めて13名の方が顔を出して下さった。
PR力・アナウンス力の不足もあり、新規メンバーの開拓が思うように進んで行っていないが、
それでもこの日は、静岡市の中心部で町内会長を務めるSさんが初めて参加して下さった。

前々日、このSさんにお声掛けいただいたKさんとの打ち合わせの中で、
Sさんの町内会を含む静岡市立城内中学校区の地図を用意しよう、ということになった。
というので、久しぶりに前日夜、「4×3印刷」のお世話になり、この地域の地図を用意していた。

「4×3印刷(よんさん印刷)」は、住宅地図を任意の縮尺で、
最大50枚まで分割印刷してくれるという、かつ、それが無償提供可ということゆえ、
DIGの実施に当たっては、大変ありがたいサイト、ではある。
ただ、同時に考えなくてはならないことは、
無償のサービスに依拠していると(防災の)ビジネスが大きくならない、ということ。
「4×3印刷」で分割印刷されたものの貼り合わせにそれなりの時間がかかるということもあり、
最近はなるべく使わないようにしている。
その代わりに、住宅地図メーカー最大手のゼンリンさんがDIG用地図を開発、販売してくれているので、
今はそれを勧めている。質の良いものにはそれなりの対価がかかる。
その真理を無視しては、長い目で見ればよろしくない結果をもたらすことを考えておきたい。

いささか話が脱線してしまった。

毎度のことながら、直前にならないと準備が進まない状況で
(一つの要因は、学生への仕事の振り方が下手、ということなのだが……)
今回は「4×3印刷」のお世話になり、それを当日貼り合わせることで議論の舞台を作った。

その後、毎度のことながら、地震防災のイロハから、つまりは
「地震で人は死なない。耐震性の低い建物に潰されて人は死ぬ」という辺りから、「防災の物語」を説き始めた。
今回特に強調したのは、静岡市の中心街という土地柄を考え、
阪神淡路大震災における鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物が崩れた様や、都市大火の様子を、
「旅の坊主」自身が現場で撮影した写真も見せつつ、そのリスクをイメージしてもらったこと。

この学区は、静岡市役所近くの繁華街と、昔からの住宅街、大別すると2つに分かれる。
繁華街は、夜のネオンは美しいが、その裏側は「勘弁してくれ!」の場合が少なからずある。
雑居ビルの中には、さすがに昭和30年代に建てられたものはそうはないだろうが、
昭和40年代の物件は相当数が残っていると思われる。
住宅街に残る旧耐震基準時代の日本家屋は、概算で3割くらいであろうか。

とすれば、この地域で覚悟しておくべき被害量は?
この、リアルな見積もり抜きに、地震防災を語ったところで、地に足の着いたものとは言えまい。

県庁前を横切る県道27号線、都市公園としての機能も果たしている青葉通り、
江川町通りに県道208号線、昭和通り(国道362号)、平成通り(ときわ通り)と、
防火帯となりそうな片側2車線の道路は、それなりの間隔で存在はしている。
ただ、それらの通りで囲まれた地域で、一旦火が出てしまうとどうなるか。

……。

防災の物語は、「着眼大局」としての視座も必要だが、やはり地域に密着した議論があってナンボのもの。
この日ご参加いただいたSさんには、何かを感じていただいたようで、嬉しかった。
ただ、Sさん一人が理解して下さったところで事足れり、ではない。
町内会なり、繁華街の振興会なりの方々と、「ふじのくにDIGセミナー」の中で、
議論する日がくることを願っている。

学生が3名、勉強に来てくれたが、3人とも予定があったようでアフターには参加せず。
というので、「大人」5名がアフターでも防災談義。

月イチの例会で、こういう議論を継続して出来ていることがありがたい。

(10月15日 記す)