夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

思ひ知らずも 惑ふてふかな

2009年09月21日 22時26分43秒 |  気になる詩、言葉


散りぬれば のちはあくたになる花を 思ひ知らずも惑ふてふかな
                 僧正遍照
                 古今集 10-0435 

散ってしまえばごみになる花にそんなことは露知らず惑わされている蝶かいな~

けっ、そんなことは100も承知で、それでも惑わされてしまうのですよ。

隠れ蓑

2009年09月21日 21時57分16秒 |  岬な日々


ハリー・ポッターにも着ると体が見えなくなるマントがでてきますね。
洋の東西、身を隠したいって願いはずいぶんとあるようです。
岬の庭にはずいぶんたくさん隠れ蓑がはえてきています。
借金取りから逃げるために植えたんだろうって?
とんでもない、一生懸命、切っても切っても、気がつくとまた生えてきているのですよ。

でも、隠れ蓑の下に隠れても、隠れ蓑が光っていては返って逆効果なのでしょうにね~

ささがにのいとかかりける身のほどを

2009年09月21日 21時48分51秒 |  気になる詩、言葉



ささがにのいとかかりける身のほどを思へば夢の心ちこそすれ
               源俊頼朝臣
               新古今集 18-1816

蜘蛛の糸が自分のみにかかってしまうほど古びた自分を思うと夢のようだ

なんとまぁ、私のことを昔々の先達が詠んでおいてくれましたがな。


        

あるときは船より高き卯浪かな  真砂女

2009年09月21日 20時53分14秒 |  気になる詩、言葉


この前の日記「秋空につぶてのごとき一羽かな」で久女の句を紹介しましたら、コメントを頂きました。その中で真砂女にも言及されておりました。

ふんふん、真砂女は実はいすみ市からそれほど遠くない鴨川で生まれて、育ったのですよね。最初の旦那さんが失踪し、お姉さんが亡くなったので、お姉さんの後をついで、お姉さんの旦那さんと結婚させられ、鴨川の旅館の女将に。でもそれが嫌さに、泊り客の海軍士官さんのところへ逃げていくのですけど、それがまた私の実家の隣町、大村市だったんですよ。仕官さんは戦地へ、で、彼女は元の鴨川に戻って、女将を続けるのですけど、結局、離婚。銀座でバーを開くのです。このバーの名前が「卯波」 
この名前の下になったのが、タイトルに挙げた句なんです。

あるときは船より高き卯浪かな

人生の浮き沈みは波よりも高い、、、
でも、波も結構高かったりして。

仕官さんのときも、相手も自分も結婚している身、不倫でした。この銀座時代にも妻のある男性との不倫。そして相手は亡くなります。

かくれ喪にあやめは花を落としけり

「句のある自伝」には「お寺の門の表の暗がりに佇ってひそかに一人で通夜をし、葬儀の焼香は彼の友人が夫人の了解を得てお別れが出来た」とあります。

今生のいまが倖せ衣被

これはなくなる10年以上前の句ですが、多くの悲しみ、苦しみ、波乱万丈の一生を経て、なおかつ晩年をそのような気持ちで送れるというのは、幸福な人だったのでしょうね。
6年前に96歳で亡くなりました。

丹羽文雄の「天衣無縫」や瀬戸内寂聴の「いよよ華やぐ」のモデルになった人でもあります。