政府、経団連、連合の新トップによる2022年度の春闘が始まった。
岸田文雄首相が旗印にした「新しい資本主義」の柱の一つ「成長と分配の好循環」を生み出すため、賃金引き上げは欠かせない。
岸田首相は、経団連に対し、3%以上の賃金引き上げを要請した。安倍晋三内閣以来政府が経営者に賃上げを求めるいわゆる官製春闘が今回も続けられる。
一方、こちらは本職の連合の芳野友子会長は、経団連の十倉雅和会長に4%の賃上げを求めた。また、中小企業、非正規労働者の賃上げについても要求した。
十倉会長は、いつもの常套句である賃上げのできる企業は要求に答えるが、そうでない企業は強要する分けにはいかないと答えた。
しかし、このような経団連の例年通りの対応では今年も岸田首相が求めている配分の実現は難しい。
確かにアベノミクスにより、企業の業績は良い、悪いが二分し、業績の良い企業は賃上げし、悪い企業は賃上げを渋ることを繰り返せば、格差が広がるだけで成長と配分の好循環に結び付かない。
岸田首相が本当に成長と分配の好循環の実現を図りたいならば、やはり経団連に対し、多くの企業に内部留保より賃上げ、大企業は中小企業にコストプッシュを求めないという原理原則を理解させなければならない。
今のままでは、バブル崩壊以後30年に及ぶ硬直した賃金事情による日本経済の停滞、成長と分配の好循環は期待できないだろう。
また、今回は特に石油商品を中心に物価の値上がりが激しい。現状は正に賃金が上がらず物価が上がるといういわゆる「悪いインフレ」に陥っている。その点からも普遍的な賃金引上げが求められている。