欧州の経済、金融危機がやや落ちつき、アメリカ経済も回復してきたという情勢から、昨秋、政権交代した安倍晋三首相の唱えるいわゆるアベノミクスで、ドル高、ユーロ高に急転回したが、ここへきて、またEU第3の経済大国イタリアの政情があわただしく揺れ動いてきたため、円高傾向に反転している。
2月25日開票のイタリア総選挙(上下両院)はベルサーニ民主党書記長(61)率いる中道左派連合が、下院(定数630)では過半数を確保したが、上院(選出議員定数315)では過半数を大幅に下回る「ねじれ」状態となった。イタリアでは上下両院がほぼ同じ権限を持つため、法案成立には上院の支持も必要で、上院少数派では安定政権の樹立は不可能だ。
このような結果を招いたのは、上院で、中道左派連合に対し、緊縮財政に反対し減税方針を打ちだしたベルルスコーニ前首相(76)中心の中道右派連合と、躍進した風刺喜劇役者のグリッロ氏(67)が率いる「五つ星運動」の三つ巴となり、どこも過半数に至らなかったからである。
イタリアはどうやって、この政治危機を乗り切るのか。主要政党連合同士の「大連立」から早期再選挙まで、選択肢はあるが、ベルサーニ氏の中道左派連合は、ベルルスコーニ前首相中心の中道右派連合とは組むつもりはなく、できれば、「五つ星運動」と連立を模索している。しかし、「五つ星運動」のグリッロ氏は、イアリア国債のデフォルトもを唱えている位で、緊縮政策に反対して支持を得たため、緊縮派のベルサーニ氏との連立は困難性がある。
連立合意が成立せず、数カ月以内に総選挙が再度実施される場合は、モンティ暫定政権が選挙管理内閣として当面、残留し、6カ月以内に再選挙になるケースが考えられる。そうなると、政治空白が生まれ、経済危機再燃につながる恐れがある。安倍内閣にとっては、とんだ当て外れになるかも知れない。