先に米政府と議会下院幹部の間で同意された不良債権買い取り機関へ、最大7000億ドル(約75兆円)の公的資金を投入するという「金融安定法案」が9月29日、下院で否決された。
この法案は、巨額の税金投入となるため、国民の批判を恐れた与党の下院共和党議員が造反、賛成205に対し、反対228で否決された。
一時は、下院共和党は公的資金を使わずに不良資産を分離する対案を示して、調整は難航したものの、28日に、米政府と議会指導部の間で、国民負担の軽減を図る修正案で合意していた。
法案の否決を受け、ニューヨーク株式市場は急落し、先週末比の下げ幅が一時、700ドルを超えた。各国の金融市場でも大きな動揺が広がっている。
先に政府と議会で大筋合意した内容は①7000億ドル全額を使うのではなく、先ず2500億ドルを投入、その後大統領の判断で1000億ドルを投じ、残り3500億ドルは、今後、議会の了承を得て実施される。買い取り費用と資金調達のために発行する国債の金利などは政府の負担となる。②政府による買い取りは、住宅ローンや商業用不動産融資のほか、住宅ローン担保証券(MBS)などが対象となる。③安値で買うために競売を実施し、買い取った資産は財務省が長期に保有して計画的に売却する。保有期限は設けず、市場が回復するまで塩漬けにして市場の安定化を図る。④納税者の負担を避けるため、救済する経営者の報酬を抑制し、救済する金融機関の株式を取得できる権利も政府が得て影響力を保つ。⑤住宅の差し押さえ防止策を強化し、ローンの借り手保護を手厚くする。⑥米連邦準備制度理事会(FRB)など金融トップでつくる特別理事会を立ち上げて議会の会計検査院(GAO)とともに制度の運営を監視する。⑦政府の損失を5年以内に穴埋めするため、必要に応じて金融業界から資金を集めるようにする。としたものだが、この合意について各議員のもとに国民の反対の声が殺到、金融機関には数十億円もの年収を稼ぐエリートが少なくなく、「強欲な金融取引に失敗したウオール街の尻拭いはできない」とする声が圧倒的だ。
米国民からすると最大7000億ドルは連邦政府予算の四分の一に当たり、米国民1人当たり2300ドル(約24万円)に当たるもので、その上、将来の増税に跳ね返るのが必至な救済処置は簡単に了承できないとする声が強い。
とは言っても、金融機関の損失が5000億ドル(約53兆円)を超え、最終的に全世界で1.3兆ドル(約137兆円)に達する予測があり、資産買い取りで赤字の金融機関が相次ぎ、かっての日本のように政府が資本注入を迫られる可能性があり、今回、世界の株が暴落、ドル安が進んでいる中で、米政府が手をこまねくばかりではいられなかろう。
思い返すと、10年ほど前に我が国で起こったバブル崩壊による金融危機に、政府は約36兆円もの公的資金を投入したが、現在それが12兆円も返されずに残っている。この穴埋めは当然税金を使うことになる。あの当時日本の国民は、公的資金投入に反対する声が小さかった。
それに比べ、アメリカは金融機関に対する公的資金投入反対のデモが起こり、今回政府、議会の買い取り機関設置に対しては猛烈な反対運動が巻き起った。
日本の金融危機の際もそうだったが、恐慌を抑えるためという理由から、止むを得ない処置として、公的資金投入を行った。しかし、率直に言って、国民の反応が鈍い中で、政府は何の苦もなく公的資金を投入、それが現在でも負の遺産として残された。
それに比べ、アメリカ人は、簡単には公的資金投入を容認しない。しかし彼らが、金融危機の脅威を理解しないで反対している分けではないと思う。分かってはいるが、日ごろ、国民よりも企業優遇の政策をとっているブッシュ政権に対する反発が、彼らに反対の態度をとらせているのではなかろうか。いい悪いは別に、こんどの法案否決により、アメリカ国民は事なかれ主義ではないという一面を垣間見た感じである。「関連:9月19日」
この法案は、巨額の税金投入となるため、国民の批判を恐れた与党の下院共和党議員が造反、賛成205に対し、反対228で否決された。
一時は、下院共和党は公的資金を使わずに不良資産を分離する対案を示して、調整は難航したものの、28日に、米政府と議会指導部の間で、国民負担の軽減を図る修正案で合意していた。
法案の否決を受け、ニューヨーク株式市場は急落し、先週末比の下げ幅が一時、700ドルを超えた。各国の金融市場でも大きな動揺が広がっている。
先に政府と議会で大筋合意した内容は①7000億ドル全額を使うのではなく、先ず2500億ドルを投入、その後大統領の判断で1000億ドルを投じ、残り3500億ドルは、今後、議会の了承を得て実施される。買い取り費用と資金調達のために発行する国債の金利などは政府の負担となる。②政府による買い取りは、住宅ローンや商業用不動産融資のほか、住宅ローン担保証券(MBS)などが対象となる。③安値で買うために競売を実施し、買い取った資産は財務省が長期に保有して計画的に売却する。保有期限は設けず、市場が回復するまで塩漬けにして市場の安定化を図る。④納税者の負担を避けるため、救済する経営者の報酬を抑制し、救済する金融機関の株式を取得できる権利も政府が得て影響力を保つ。⑤住宅の差し押さえ防止策を強化し、ローンの借り手保護を手厚くする。⑥米連邦準備制度理事会(FRB)など金融トップでつくる特別理事会を立ち上げて議会の会計検査院(GAO)とともに制度の運営を監視する。⑦政府の損失を5年以内に穴埋めするため、必要に応じて金融業界から資金を集めるようにする。としたものだが、この合意について各議員のもとに国民の反対の声が殺到、金融機関には数十億円もの年収を稼ぐエリートが少なくなく、「強欲な金融取引に失敗したウオール街の尻拭いはできない」とする声が圧倒的だ。
米国民からすると最大7000億ドルは連邦政府予算の四分の一に当たり、米国民1人当たり2300ドル(約24万円)に当たるもので、その上、将来の増税に跳ね返るのが必至な救済処置は簡単に了承できないとする声が強い。
とは言っても、金融機関の損失が5000億ドル(約53兆円)を超え、最終的に全世界で1.3兆ドル(約137兆円)に達する予測があり、資産買い取りで赤字の金融機関が相次ぎ、かっての日本のように政府が資本注入を迫られる可能性があり、今回、世界の株が暴落、ドル安が進んでいる中で、米政府が手をこまねくばかりではいられなかろう。
思い返すと、10年ほど前に我が国で起こったバブル崩壊による金融危機に、政府は約36兆円もの公的資金を投入したが、現在それが12兆円も返されずに残っている。この穴埋めは当然税金を使うことになる。あの当時日本の国民は、公的資金投入に反対する声が小さかった。
それに比べ、アメリカは金融機関に対する公的資金投入反対のデモが起こり、今回政府、議会の買い取り機関設置に対しては猛烈な反対運動が巻き起った。
日本の金融危機の際もそうだったが、恐慌を抑えるためという理由から、止むを得ない処置として、公的資金投入を行った。しかし、率直に言って、国民の反応が鈍い中で、政府は何の苦もなく公的資金を投入、それが現在でも負の遺産として残された。
それに比べ、アメリカ人は、簡単には公的資金投入を容認しない。しかし彼らが、金融危機の脅威を理解しないで反対している分けではないと思う。分かってはいるが、日ごろ、国民よりも企業優遇の政策をとっているブッシュ政権に対する反発が、彼らに反対の態度をとらせているのではなかろうか。いい悪いは別に、こんどの法案否決により、アメリカ国民は事なかれ主義ではないという一面を垣間見た感じである。「関連:9月19日」