国民一人一人に番号をつけるいわゆる「マイナンバー法」が24日の参議院本会議で可決成立した。施行は約2年半後の2015年1月からになる。
この制度は前には「国民背番号制」とも呼び、国家が強制的に国民に番号をつけてもよいのかと、多くの反対論があったが、意外にあっさり日の目を見ることになった。前のめりに突き進んだのが前政権の民主党なので、ほぼ与野党が一致して成立の運びになった。
今回成立したいわゆる「マイナンバー方」は、国民一人ひとりに12桁の番号を割り当て、氏名、生年月日、所得、税金、年金などの個人情報を、その番号で一元管理する。希望者は、番号と顔写真などが記載された「個人番号カード」が交付されるとのことだ。
現在、生年月日や住所は自治体、年金番号は日本年金機構、納税者番号は税務署というように、行政機関は国民の個人情報を各機関で個別に管理しているため、システムの乱立によるコスト増と事務の非効率になっているが、共通番号制度の導入によって、多岐にわたる個人情報を1つの番号で管理できるため、行政コストの削減と事務の効率化が見込まれという。
また、国民の所得を正確に把握することで、所得の過少申告や扶養控除をチェックし、不正還付を防止しやすいなどの点も挙げられている。政府が制度導入を目指す背景には、こうした行政の効率化と給付の適正化によって、2015年に150兆円にも達すると試算されている社会保障給付を抑制する狙いがある。
国民にとってのメリットは、自分自身の情報をマイ・ポータル(仮称)で確認することが出きるため、自分の情報確認、訂正が可能になり、確定申告の際に所得を確認することもできるとのことだ。
一方で、問題点のさまざまに指摘されている。1つは、制度導入には多額の初期投資が必要なこと、運用開始後も維持費などが相当かかる見通しだ。
2点目は、個人情報の流出の懸念で、割り当てられた番号は生涯変わらないため、いったん情報が漏洩すると、長期 にわたり、個人が大きな損害を被る危険性がある。
こうした危険があることから、制度導入段階ではマイナンバーの民間利用は禁止され、利用は社会保障や税、災害時の本人確認に限定される。しかし、それだけでは使い勝手が悪いため、莫大な投資に見合うメリットが得られるかどうか疑問視する声が少なくない。
政府は、施行後3年を目途に、たとえば金融機関でも利用できるようにするなど、マイナンバーの利用範囲拡大を検討するとしているが、利用範囲が広がれば広がるほど情報流出や不正利用のリスクも拡大する。共通番号制度を導入しているアメリカや韓国では、情報流出による被害が絶えないことから、利用に制限を設け始めている。
また、当初、共通番号制がそもそも必要な主な理由として、現行制度では個人事業者の所得が把握できず、膨大な納税逃れがあるため、これらの事業者の所得を把握することだったと思うが、どうもこの「マイナンバー制度」でもこれが難しいとのことだ。
いずれにしても、国家が法律で個人に番号をつけることは、あまり気持ちが良くない。また、さまざまな弊害が出てくる恐れがある。最低限、この管理にはち密な管理規則を設け、個人情報が拡散されないよう万全を期さなければならない。