DREAM/ING 111

私の中の「ま、いいか」なブラック&ホワイトホール

ゲド戦記★鈴木プロデューサー・ロングインタビュー

2006-03-19 | アニメ・マンガ・特撮TV
ジュリアン・レノン、手塚真、木村一八(レベル違う?;)・・・
天才と呼ばれる父を持つ二世は、ほとんどの場合、挫折しているような
そんな印象があります。
や、世評として父を超えられない、という意味においてであり
本人たちは個人として幸せなのかもしれませんが。

宮崎五朗氏の場合も、その重圧は、制作発表当時から想像に難くありません。
今回、こうして監督の手記、制作現場の裏話が同時進行で公開されるという方法を取っているのも、ディープなジブリファン、宮崎駿監督ファンへの五朗氏のお披露目であり、作品作りに巻き込んでく戦略なのだろうと、思っています。
たしかに、このサイトで描かれる五朗氏は魅力的で、私などはすぐに肩入れしちゃいます。が、その反面、「でも作品は別」と思う、宮崎駿アニメファン心理は確実に存在します。

そうした葛藤はジブリ内部、それ以上に宮崎駿本人にあることがわかる、興味深い内容でした。宮崎駿氏にとってあまりに思い入れが強いために、アニメ化できなかった『ゲド戦記』を息子がやる・・・それは親としての心配以上に、作り手として1種の嫉妬を伴う作業なのかもしれません。

心中暴風雨状態のような天才・宮崎駿氏を押さえ込んでいく
鈴木プロデューサーの手腕が光るロングインタビュー。
後継者を育てることの意味、これはすべての業界人に通じる話だと思います。
また、宮崎駿氏に、と依頼してきた原作者に「息子の五朗に任せて欲しい」と承諾を取るシーンの宮崎氏の葛藤と矛盾した行動(笑)、その緊迫感も見どころです。

そして、インタビュー最後に語られる、ゲド戦記を今の世の中に送りだす意味。
さすがに深いっす!
「この国を何とかするためにそれをやるという発想は、庶民じゃなくて為政者でしょう。国がやることにたて突くのが庶民じゃなかったんですか。増税して改憲して、それが何につながるか。「欲しがりません勝つまでは」ですよ。だから皆に目を覚まして欲しいし、小泉内閣の虚像をはがして欲しい。」
「皆がそんなに立派にならなきゃいけないんでしょうか」
「計算ができないから無茶をするのであって、無茶をするから面白いんです。」


なんだか企業戦略・経営論にも通じる話です。経営者必読!w
(・・・ここまで期待を高められてしまって、大丈夫か、私(汗;;)

世界一早い「ゲド戦記」インタビュー(完全版)
鈴木敏夫プロデューサー/ヨミウリ・オンライン 依田謙一

(以下抜粋)
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前提として、ジブリの今後という問題があります。高畑勲は70歳。宮崎駿も65歳。2人合わせて135歳。これに僕の歳を足せば200歳に近づいている(笑)。まぁそれはともかく、このままいけばジブリは終わりますよ。
(中略)
宮さんは作る方は天才でも、教えるのは決してうまくない。先生としてはむしろ下手です。彼を助手席に乗せて運転すればすぐに分かりますよ。特にマニュアル時代は大変でした。「はいセカンド、はいサード、はいトップに入れて!」と横からいちいち口を出すから、大抵の人は運転がうまくできない。挙句の果てはノイローゼになってしまうんです。
(中略)
「魔女の宅急便」(89年)も「ハウル」も、最初は別の人が監督をやる予定だったのが、結局宮さんがやることになったように、映画作りでもそういう光景を何度か見てきました。もちろん宮さんに悪気はないんですよ。ただ、彼は一生懸命教えているつもりでも、受け取る側は、あまりに豊富な知識と経験を押し付けられるので、大変なんです。十二指腸潰瘍になって来なくなってしまう人もいたくらい(笑)。
(中略)
……でも、なかなか若い人に作るチャンスが巡って来ないのは確かです。宮さんも歳ですからね、時々極端なことも言うわけです。「俺はもう若い力は信じない。年寄りだけで作っていく!」とか。
(中略)
この絵ができた時、僕は吾朗君が監督としていけると確信しました。それで、宮さんにちゃんと話さなければと会いに行ったら「鈴木さんはどうかしている」と怒り出した。「あいつに監督ができるわけがないだろう。絵だって描けるはずがないし、もっと言えば、何も分かっていないやつなんだ」と。そこで僕が吾朗君の描いた絵を見せたら黙ってしまった。一枚の絵ってそういう力があるんですね。
(中略)
庵野(秀明)に見せたら、「これは完全に宮崎アニメですね」と舌を巻き、「吾朗君はいくつですか」と聞いてくるので、「38歳だよ」と答えたら、「どうしてもっと早くやらせなかったんだ」と言っていました。
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2 コメント

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ジブリ (辛子蓮根)
2006-03-20 17:13:40
「ゲド戦記」については、ファンタジーの傑作だとの世評を知っているだけで読んだ事はなく、ジブリに関してもあまり詳しくはないです。

しかしジブリ美術館は1度行ってかなり気に入り、今週また一家揃って行く予定です。(チケットは日時指定制なので這ってでも行かにゃ・・・)



ジブリが上記のような問題を抱えているとは知りませんでした。

宮崎駿氏が天才であることは私のような門外漢にも分かりますが、後継者育てが下手だってのもありそうな事だなあと思います。

どんな分野でも天才と言われるような人は、ありあまる自分の才能に振り回されているようなところがあり、自分の事に手一杯で、他人に構っている暇が無いんじゃないでしょうか(例え自分の子であっても)

悪気は無いんだろうけど、回りの人たちは大変そうですね~。

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辛子蓮根様 (なるもにあ)
2006-03-21 11:42:41
私もゲド戦記は、今からトライ(予定;)なんです。かなり暗いようなので、元気がある時に読もうかなぁ、と。

で、ジブリ美術館はご近所ですが、行ったことがありません・・・(いつでも行ける=永遠に行けないの法則;)



このインタビュー、内部事情暴露で面白いですよね。

>ありあまる自分の才能に振り回されているようなところがあり、

>自分の事に手一杯で、他人に構っている暇が無い

同感です。

それが天才が天才である由縁なのでしょうね。

レノンや手塚治虫には女房役がいなかったけれど、ジブリは五朗監督が成功すれば、後継者作りに成功したことにもなりますね♪鈴木プロデューサー凄い!



ちょっとゲド戦記、別の意味で楽しくなってきました。

(すでにジブリ戦略にはまっている、という気も・・・)
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