「つめたいよるに」 江國香織
新潮文庫 1996年
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とても美味しい短編集です。
この本は、短編集ふたつ「つめたいよるに」「温かなお皿」を組み合わせて文庫化したのですが、そのうち「温かなお皿」の短編は、以前いくつか組み合わされて、テレビドラマ化されているのですよね。主演は確か水野美紀? うろ覚え。
江國さんの物語と出会ったのは「きらきらひかる」でした。映画のほうの。
最初の設定「アル中の妻とホモの夫とその愛人の男」というのに、妙な興味を惹かれて映画を見て、さらに原作を読んで、そのあまりの雰囲気の良さにハマッたという~。
他にもいくつか長編がありますが、個人的に、この方の魅力は短編とエッセイにあるように思います。
「つめたいよるに」の中の「デューク」に出てくるプールの水、「スイート・ラバーズ」の氷すい、「冬の日。防衛庁で」の、正妻に会うために念入りに選ばれたファッション。短編集「すいかの匂い」の中の「水の輪」というすずしい名の和菓子や、「はるかちゃん」の赤いくちびる。
小さな女の子がささやかに集めた、ちゃちで綺麗でうすっぺらな宝物の数々。江國さんの短編を読むたびに、そんな言葉が頭に浮かぶのです。