(両国駅西口の力相撲の石像)
俺は東京の友人と江戸東京博物館へ行くことにした。
待ち合わせ場所を両国駅の力相撲の石像前にした。
石像は大勢の人たちに触られた所が黒くなっていた。
博物館では「モースの見た庶民のくらし」について特別展をおこなっていた。
モースは明治の庶民のくらしを観察したり、生活用具をコレクションしていた。
モースは「世界中で日本ほど子どもが大切にされている国はない、子どもたちは朝から晩まで幸福であるらしい」と、子どもたちの様子を書いている。
また、「親は子どもに癇癪を起すことはない」と。
*****物が豊かで、幼児期から外国語を詰め
込まれている平成の子どもはどうかな?*****
「子どもが誤って障子に穴をあけたとすると、四角い紙を貼り付けずに、桜の形に切った紙を貼る」と庶民の豊かな心に驚いている。
おかめの顔の形をしたユーモラスな下駄屋の看板
どんな歩き方をしていたのか、歯が斜めにすり減った下駄
ダイコンを彫刻した八百屋の看板
ウサギの形をした火鉢
ご飯を炊く釜、おひつなどの調理道具
ガラス瓶に入れた砂糖菓子、当時の鰹節、海苔などの食品
柄物の手ぬぐい
携帯用の平たいそろばん
刀の鞘の漆塗り模様の見本
大きな桶に焚き口を取り付けたような据え風呂で、湯浴みする婦人の写真
***火傷をして死なぬのが不思議とモースの解説***
和服を着た庶民の等身大人形や鎧に身を固めた武士の生き人形
俺はイヤホンガイドの解説を聞きながら展示物を見て歩いた。
そして気がついてみたら、友人の姿が見えなくなっている。
会場をいくら探し回っても見つからない。
俺は案内所へ行って館内放送で彼を呼び出してほしいと願った。
ところが、博物館では放送は出来ないので、その人の特徴を知らせると探してくれるとのことだ。いわゆる手配書の作成だ。
「髪の毛はゴマシオ、四角い顔に眼鏡、
眉が太い老人で、紺のジャンバーにズボン」
それに、力相撲の前でデジカメで撮った彼の写真を見せた。
こんな迷子ならぬ迷い人の手配書を頼りに、博物館の職員は探し回った。
そして見つけてくれた。
博物館の方々に探してもらわなったら、俺と彼は一日中館内をうろうろしていたことだろう。