すぎな野原をあるいてゆけば

「おとのくに はるのうた工房」がある

すなば・パレット・植物図鑑

2008-08-27 02:19:24 | 短歌
「短歌研究新人賞」の佳作に入れていただきました。
ありがとうございます。(みてくださった方・メールやメッセージ下さった方みんな

(☆)の5首が9月号に掲載されています。


「すなば・パレット・植物図鑑」  

からっぽの石けん箱をしずめたらぷくぷく話しだす日なた水

水面で息継ぎをしてまた赤いバケツの底にもどる円盤

枇杷の木を上から下へたどるのが段々畑をぬけるちかみち

ポップコーンみたいに増えて困ってる ないしょで蒔いたフウセンカズラ(☆)

爪よりもちいさくなったチョークたちヒマラヤスギにあつまりなさい

学校のすなばにだれがタクラマカン砂漠の砂をはこんで来たの

さわってはいけないものを投げ上げたストップモーション塩素のひかり

ゆっくりともたれかかって八月の土管で耳をからっぽにする(☆)

ブランコの板をかかえて目をとじて(嵐の海で船はこわれて)

二学年上の算数プリントを拾う 暗号としてうずめる

次は勝てるはずムラサキカタバミの濡れた繊維をゆびにまきつけ(☆)

さすが国道 ビルの窓辺のほこりからダリアのように砂鉄が採れた

教室が二階になれば窓からはアドバルーンがまっすぐ。きっと。

うつくしい桃の樹液は筆箱のなかで琥珀にちかづいてゆく

あふれだす花のひとつが海藻に見える植物図鑑の表紙

ほんものをみたい ブリキの胴乱はむかしのものかみらいのものか

つぎつぎと手をはなす音たしかめてスズメノカタビラゆさぶっている

根もとから一センチにはトゲがない ママコノシリヌグイこわくない(☆)

むらさきをすこし混ぜてもニワトリのとさかの厚さ描けなかった

花びらの枯れたところも歯ブラシの影もみつけている五年生

ニワトリとわたしのあいだにある網はかかなくていい? まようパレット(☆)

アポロチョコみたいな首を持っているハルノノゲシのミルクは苦い

おんなのこだってかなしい最終回 猫がさらっていく宇宙船

図書館のおねえさんはあのいじわるな鳩となかよくなりたいという

やまのこのはこぞうというだいめいはひらがなすぎてわからなかった

スズガヤのくしゃくしゃ髪をひとすじも切らずにほどくみどりの時間

とんがった砂利を拾えばとんがったゆうがたの影すいこまれてく

あしたにはのこらずちがう青になれ土手いっぱいに咲くイヌフグリ

おひるだよ 呼ばれて立ち上がったからバケツの国は消えてしまった

ぎんいろの、さかさまの、雨? 交信の方法をもう思い出せない

コメント (7)
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