先週、病院に行きました。
ストックポートで ただひとつの病院、ステッピングヒル・ホスピタル Steppinghill Hospital 、大規模な総合病院です。
この青い建物( 救急病棟 )に病院名が国道A6(広いバス通り)から見えるように大きく書かれているのですが....
「本館」はこのレンガ造りの古いたてものです。
本館から 無数の渡り廊下でつながる「新館」やら建て増しやら増殖したアメーバのように病院の建築物が拡大され、小さな町のような規模の広大な敷地内に広がっています。
本館の正面入り口を入ったら 、総合受付のようなカウンターがありますがこれはただの「案内所」です。
カウンター内に座っている、主にお年寄りのボランティアが 目的の場所にどうやって行けばよいかを丁寧に説明してくれます。
「1日1万歩歩くのが目標だ」というおじいさんが目当ての整形外科までいっしょに連れて行ってくれました。
自分が行く科の場所が わかっていたら直接行って、科ごとに受付を済ませます。
個人あてに予約完了を証明する手紙が科から郵送されてきますので それを手渡し、個人情報(住所、生年月日)に関する質問に答えたら身分証明も完了!
この玄関ホールで座って待っている人たちは 迎えのタクシーか車を待っているのでしょう。
アーチを くぐった 正面壁にある案内表示です。
ここで突然イギリスの医療制度についての解説です。
大きめの都市であるストックポートに病院がたったのひとつ、の記述におどろかれたでしょうか。
イギリスの病院は日本のいわゆる「病院」とは機能が違います。
病院には患者が勝手に行くわけにはいきません。
具合が悪かったり病気になったりすればまず、地域の「GP (general practitioner= 一般医)」に見てもらいに地元の「診療所 GP's surgery」に行かなくてはなりません。
診療所は、原則として自宅のそば、たいてい早朝からかなり遅くまで あいています。完全予約制で時間通りに行けば 待ち時間は ほぼなし。
原則として、自宅のそばの 自分の名前が登録してある診療所以外の医療施設にかかることはできません。
都市近郊の ある程度の規模の診療所には 数人のGPがシフト制で勤務しています。
医師の指名もできるのですが、ただでさえ予約に2週間から3週間(緊急度に応じてかなり臨機応変に対応してくれます!)もかかるのに 選り好みをすればもっと先延ばしになりますので、GPの選択は予約受付係にお任せ、が普通です。
すべての科を超越して、あらゆる症状を見てくれる医師がGPです。
風邪とか おできとか 鬱とか、難聴、貧血...たいていのことはGPが処置して、薬の処方もしてくれます。
専門医の診断が必要だとGPが判断すれば 市町村群単位の自治体に普通 ひとつしかない総合病院の予約をとってくれるのです。
診療も施術も入院も何から何まで、すべて無料です。
医療はすべて国家によって管理されています。
医師や看護師ほか、医療サービスに従事する職員はすべて国家公務員なのです。
(高額な医療保険に任意で加入している人々が利用する個人経営の医療設備も少数ですが存在します)
私がこの大総合病院の整形外科でレントゲンを撮ってもらって、整形外科の専門医に見てもらった理由は ・・・五十肩です!GPに長引きすぎ と判断され病院で診察が受けられることになりました。
左に曲がってさらに...
渡り廊下をぬけて...完全に迷路です。
各病棟や たくさんある渡り廊下にも それぞれ出入り口があるので 本館案内所を通らずに 直接 目当ての場所に行ってもいいのですが.....
要所要所の壁の案内表示と矢印を頼りに初めて行く科にたどり着くのは至難の業です。
次回、また一人で行く自信はありません!
イギリスの医療制度について、続きです。
医療サービスが無料ですので、当然 というか 誰も疑問に思わないのですが 患者は 医師も病院も選べません。
日本で常識だという「セカンドオピニオン」も基本的には得られません。
お金のある人もない人も、受ける医療サービスは同等です。
緊急度の高い順に予約がはいるので、場合によっては何か月も予約待ち、もあり得ます。
入院はよっぽどのことがない限りさせてもらえません。
私が数年前、乳がんの疑いでしこりの摘出をした時も、手術後 麻酔が冷めた後1時間以内に自宅に帰されました!
出産も無料ですが、立ち会うのは通常医師ではなく助産師です。医師は緊急の場合に備えて待機しています。
出産後は何も問題がなければ、2時間ほど休んで、助産師と記念撮影をして、入院なしで母子ともに帰宅です。
里帰りの習慣もないイギリスで、他に小さい子供がいることも多く「新生児と休養の必要な出産直後の母親が 自宅で大丈夫か!?」と思われることでしょう。
翌日から「保健師 health visiter」の訪問がありますし、男性の育児休暇が比較的簡単に長くとれるので、意外と何とかなるものなのです。
(ちなみに私の出産は二回とも難産で緊急手術を要しましたので、産後それぞれ2週間以上も入院する羽目になりました!)
今年は医療を国家体制の管理下に置くNHS(National Health Service 国家医療保健サービス) 誕生 70周年なのだそうです。
完全無料医療を国家が保証した世界で最初のシステムなのだそうです!
人手不足と予算不足で問題は山積みなのですが、もし意図したとおりに正確に機能しているとしたら間違いなく世界で一番素晴らしいシステムなはずです。
医療で儲ける人がいない、患者が貧富の差、住んでいる地域その他(かかりつけ医の出身大学や紹介状を書いてくれる人の有無など?)に関係なく無料の医療の恩恵が被れるというのが基本理念です。
国民のみならず居住する外国人も同等です。(以前は短期滞在の旅行者にも適応されていましたが、さすがに撤廃されました)
薬漬けになる人、薬を売って儲かる人などはいないはずです。
すべての患者個人の医療記録が国によって管理されているため、生まれてから死ぬまでにかかった病気や服用した薬や検査の結果がすべてまとめてNHSのコンピューターに残ります。
例えば引っ越して、引っ越し先の地元の診療所に登録しなおしても、国内を旅行中に急病になって、地元の病院に搬送されたとしても、名前や生年月日などの個人情報を伝えれば国中どこでもNHSの医師が患者のこれまでの医療記録(病歴や投薬歴などを含む)にアクセスすることができるのです。
出産費用が無料、というのは少子化で悩む日本でも参考にもなるのではないかと思うのですが。
ステッピングヒル・ホスピタル、とにかく大きいです。
病院内を車で行き来できます。
整形外科の待合室、この日はガラガラでした。
レントゲン検査の結果、GPが心配した骨にひびが入ったりといった心配はなく ただの五十肩 frozen shoulder であることが判明。
生活にいろいろ不自由をきたしているので来週 もう一度戻って関節に注射を打ってもらうことになりました。
(ステロイド注射はGPですでに施術済みなのです。ききませんでした)