ストックポートは美しい町です。
古い建築物がよく保存された景観保存エリアがタウンセンターにいくつかあります。
保存する価値のある古い建物の並ぶ通りに見苦しく点在する中途半端にモダンな建物を取り壊し、周囲に調和する古い様式の建物を新築したり(インチキ!)、保存状態の悪い建物を修復、復元したり景観を整えるプロジェクトが進んでいます。
ストックポート日報 創刊時(10年前)、たくさん写真を載せたオールド・タウン The Old Town のー部、丘の上のマーケット・スクエア Market Square 界隈です。
夫と久しぶりの街なかの散歩です。
景観はたしかに向上しつつあります。
セント・ピーターズ・ブリッジ St Peter's Bridge (☟)から見下ろす景観保存エリア、リトル・アンダーバンク Little Underbank の景観は圧巻です。
去年、1,870年代を舞台にしたネットフリックスのオリジナルドラマの撮影に使われました。やじ馬根性丸出しのその時の記事のリンクです☟
ドラマや映画の撮影場所を提供して観光客を呼び寄せるつもりらしい、街並み自慢のストックポート
マーケット・スクエアから丘の下のショッピングエリアに降りる急な坂道、ブリッジ・ブロウ Bridge Brow を通りました。
...景観向上途上エリアの影の部分です。
私がストックポートに越してきた25年ぐらい前から食品店はすでにスーパーマーケットに完敗、メール・オーダー(通信販売)や、駐車場のあるショッピングセンターでの買い物に客足をとられすでに個人商店は苦戦していたはず。
今ではオンラインショップに太刀打ちできる商店街は少数派でしょう...どこの町も同じですね。
それでも、この坂沿いの間口の狭い店舗群では生地屋、キャラクターグッズなどのコレクターショップ、ヒッピー好みのインテリア雑貨屋などが長いこと営業していました。
「家賃が払えるのか」といらぬ心配をしたほどの零細な営業内容でしたが...昔ながらの持ち家経営でしょうか?その後、パンデミック前後あたりの閉店ラッシュ ... 代替わりして相続者が店を継がなかったとか?
18,19世紀の街並みに復興する「再開発」のため市が買い上げた店舗もあるかもしれません。
2年ほど前から坂の底から2軒目で、いわゆる「エコ・ショップ eco shop」が営業しています。
以前、地元の名物「鮮魚店 fishmanger」だった店舗です。
ストックポート日報の記事です☟
砕いた氷の上に並ぶ魚が涼しげ、魚屋の店先
海のアスパラガスと、ハドックの燻製、イギリスの夏のディナー
パンデミック前にはもう閉店していた記憶があります。
話好きなサカナ屋の兄弟は店をやめてどこに行っちゃったのでしょう。リタイアするにはまだ若そうでした。
うちでは週に1回、サカナを食べますが、通りがかりにこの店を利用したのは20年の間にたったの5,6回でした。スーパーマーケットにクルマで乗り付けて1週間分の買い物をするついでにサカナも買った方が便利で割安ですから。
サカナ屋さんだった時は中に入れなかった、ミステリアスな急な坂の途中の店の内部です。驚きの奥行き!(入り口は写真奥)
表に面した部分は食品販売コーナーです。
奥と左右に段差がいっぱい。
プラスチック包装を排除、持続可能な生産方法、動物実験なし、オーガニックや日本ではまだなじみがないらしいフェア・トレード Fair Trade(途上国の生産者支援)にこだわった、環境に配慮した製品が所狭しと並んでします。
経営者の女性の好みで、ネコのモチーフの製品も充実していました。
洗って何度でも使える布製の生理用品や化粧落としパッドなどがありました。使い勝手はどうなのでしょうか。
夫は量り売りの紅茶に興味を惹かれましたが、残念、種類はブレンドの1種のみ。
ヘアケア商品、洗濯洗剤や食器洗剤も持参した容器に入れて量り売りしてもらえます。
こんな店が本当に増えています。
「意識高い系」の中産(=知識)階級の人が住むエリアや、なぜか古い街並みが売り物の観光地に必ず1軒はあると断言できます。
観光地に行くと私はよくそんな店に入って記念にオーガニックの高級なリップバームを買います。荷物にならずモノも増えず産業支援で一石三鳥。
支援のために何か買いたいと物色し始めた夫は私にリップバームをすすめましたが、観光に来たわけでもない地元の店で薬局の2倍以上の値段を払う気はありません。
だいぶ迷って、2枚で4ポンド80ペンス(903円、高い!)のヘチマの繊維を圧縮した食器洗いスポンジ(麻ひものループ付き)を買いました。
夫は今使っているシャンプーとコンディショナーを使いきったらプラスチックのカラ瓶を持って、量り売りシャンプーを買いに行くと言っています。
1回使って廃棄されるシャンプー瓶などのプラスチックごみ問題は深刻です。
2年ほど前に流行ったシャンプー・バー(固形石鹸)をうちでも使ってみたのですが、泡立ちが悪く1回限りでやめました。その頃、どこでも売られていたシャンプー・バーは以前ほど見かけません。もちろん「エコ・ショップ」にはまだあります。
地元の住人らしい英国人と買い物に来た、「観光客」らしいアメリカ人の女性がお店のロゴやネコのプリントが入った、生成りの薄い生地のトート(日本で言うエコバッグですね)をおみやげにたくさん買っていました。観光地とは言い難いストックポートに外国人の観光客!
古い街並みに「エコ・ショップ」、ストックポートも観光地の要件を充たしている!?
30分以上この店にいたあいだ、この店に入ってきたのはこの2人連れだけ...環境や体に優しく社会不正にも抗議を表明する素晴らしい理念のエコ商品店...日常使いするにはお値段がネックのエコ商品...人々の日常のニーズに応えているのでしょうか。
あるだけで意味がある...(かな?)つぶれずに何とかとどまってほしい意欲的な店です。ストックポートの「意識の高さ」も表明していそうです。スーパーとは競合しない特殊な需要のあるこれらの店は地元の人々が支えるしかありません。
ブリッジ・ブロウを下りきってでたブリッジ・ストリート Bridge Street も ...
左右にシャッターが下りた絶望の景観保存地区。
左側は、(撮影に使われた)リトル・アンダーバンクにつづく、おなじみ街並み保存地区で、完全無欠のチューダー建築(15世紀~)2軒を有する(!)グレート・アンダーバンク Great Underbank です。
ブリッジ・ブロウを下から見たところです。