西洋の自死―移民・アイデンティティ・イスラム

2019-08-16 16:46:58 | Book
個々の国民の利益と国益は両立できるのか。

戦前の日本では、国体護持のため、一億総玉砕しろと言われていた。国民がみな死んでも守る国益とは何なのか。
現在のヨーロッパでは、国益を維持するために大量の移民を迎え、元から住んでいた住民の生活が破壊されている。にもかかわらず、国益を守るためには移民が必要であるという。ここで言う国益とはなにか。

人間の細胞は日々入れ替わっている。個々の細胞が死ぬことにより、人の体は健康に保たれている。つまり、全体の利益のために個が犠牲になっている。

現在の歪んだ世界情勢は、間違いなく西洋が作り出したもので、移民により西洋が今までとは違った形の社会になれば、西洋だけでなく世界そのものも、また、形が変わるだろう。それが、今よりよくなるのか、それとも、悪くなるか、それはわからない。

従来は、西洋の国家体制、文化モデルが、最も優れたものとして誰も疑わなかったわけだが、中国やインド、中東の台頭によって、多元的になるのは間違いない。

皆が絶賛するシンガポールも独裁国家なわけで、(一見)人に優しい独裁国家が、今後の主流になるのかもしれない。

また、なんだかんだで、根幹にある人口減少の問題が移民政策の一番の要因なわけで、ヨーロッパではそれを移民によって保管したため経済成長が続いたが、それを放置した日本は経済成長が完全にストップしているので、移民政策を変えられる(=制限する)かどうかは、これから日本経済がどうなるか次第なのではないかと思った。

日本が少子化にもかかわらず経済がクラッシュすることなく社会が維持できれば、他の国も真似できるだろうし、どこかの時点で破綻すれば、出生率が上がらない限り、やはり、移民に頼るしか他に選択肢がない、ということになるだろう。


本作は、内容は興味深いのだが、文章が冗長で同じことを何度も繰り返し書いたり、自己陶酔の文学的表現など、とにかく読みにくかった。ここらへんが、いかにも、西洋人が書いた文章という感じだった。


西洋の自死―移民・アイデンティティ・イスラム
東洋経済新報社 (2018-12-14)
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