市街・野 それぞれ草

 802編よりタイトルを「収蔵庫編」から「それぞれ草」に変更。この社会とぼくという仮想の人物の料理した朝食です。

ソプラノを聴く  みやまコンセール・ホール

2009-04-28 | アート・音楽
  第77回日本音楽コンクール受賞記念演奏会を霧島町の音楽ホール「みやまコンセール」に聴きに26日に行った。お目当ては受賞者のなかの一人であるソプラノの馬原裕子さんであった。彼女は家内の生まれ育った鹿児島県姶良町出身だと新聞で報じられていた。あの狭い田舎町ならご近所だったかもというような好奇心もあったわけである。

 ソプラノはいい歌手なら、あの歌声につつまれるような快感がある。下手なら、これほど聴くに耐えられない歌もない、歌詞はわからず、節回しは単調、楽しむどころか苦痛である。

 受賞者は彼女のほかにヴァイオリン瀧村依里、ホルン福川暢明,ソプラノ岩下晶子,ピアノ喜多宏輔の4人でいずれも第一位受賞者、馬原さんだけが第三位受賞である。郷土出身ということで、みやまコンセールから出演を依頼されたのか。舞台最初の登場に割り当てられていた。

 なんとなく格下の扱いではなかろうかと思うのだったが、その歌は圧倒的なものであった。軽々と彼女の体を楽器のようにしてあふれ出してきた歌声で会場は満たされつつみこまれていくのであった。シューベルトの作品4曲で、その3曲目がアヴェ・マリアを選んであった。これがすばらしかった。感傷に流れず、誇張もなく、抑制された身体の動きでみごとなアリアが聴衆を魅惑していった。終って拍手は鳴り止ます、もう一度舞台に出てきての挨拶であった。こんなことなら、コンサートのトリでの出演であったら、いっそうコンサートは印象を深めたろうと思えたのだ。

 3位でこれなら1位はどうということに期待が高まるのだが、段違いにこちらが勝っているということではなかった。それぞれの演奏、表現力で、ぼくは、この馬原さんが、もっとも演劇性があったと思えた。

 田舎町で育ってこれだけのものをという思いをしたのだが、東京芸大声楽科卒、同大学院終了というエリートコースである。それと、豊富なオペラ出演が、あの演技力を獲得することになったのだろう。

 そのあとふと思ったのだが、あの声で、イレイヌ・ページのメモリーを歌ったらどうなるのだろうと、その他、なぜ、ソプラノ歌手は、この世にありあまるほどあるポップをうたわないのだろうかと残念である。スーザン・ボイルの圧倒的舞台を思い出すのであった。

 その他、ホルンもピアノもヴェイオリンもどれも超絶技巧とダイナミックなドラマ性を堪能できた。

 5人のうちホルンをのぞいて、全員東京藝術大学出身者である。東京芸大の独占企業ぶりが凄い。なぜなのだろう。司会者はいなく、受賞者もしゃべらず、アンコールもなく、清潔感あふれるコンサートだった。会場も簡潔、明快ないい音楽ホールであった。入場料2000円とは安かった。

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