イベントの成功打ち上げの席で、ぼくは委員の一女性の話を聞いた。というのも前の席に座った彼女が、胃のあたりを少し両手で押さえるようなしぐさをしたからである。
「どうしましたか?」 「いえ、先日のことを思いだしまして・・」
実は先日、彼女は、イベントのお礼である人物、親子ほど年の違う人に挨拶に行った。彼はすぐに彼女を食時に誘った。彼女は礼儀として誘いに応じた。で、その席での話しだ。彼は、席に着いたとたんに彼女に向かって、いかに自分の芸術が素晴らしいか、自分の活動が評価されているかをしゃべり始めだした。止まりようもないので、たまりかねて彼女は素晴らしいです。ほんと・・さんの業績は良くうかがってきましたと言ったところ、それをまともに受け取られますますハイテンションになり、一時間近くにもなり食べる楽しみも消えてしまったというのだ。
「こんなお世辞をまともに受け止めるなんて、信じられます」ときれいな眉を動かし、しぐさで「素晴らしいですわ」のお世辞をくりかえしてみせた。
「女の言葉の裏を感づかないなんて、トラに餌を手でさしだすようなもんね」
ここで笑って終わりだが、彼女は目をすえたように固まっているのだ。
「その人、もう生命力が弱っていたんじゃないの、それで若いあなたにすがろうとしたのかも」
「生命力はすこしは弱ってらしたかも。でも、後で聞いた話では、その賞をもらうためには、選考委員の知人に、電話、面会をくりかえし、行政やメディアの教え子などにも賞を与えられるようにと、執拗な要請されたと聞きました。そして、とうとう取られたんですよ。凄いですよ、そのエネルギーは!」
「ふーん、<無知こそ力なり>のオーエルの言葉があるけど・・」
「そうなの、そうなの、無知こそ力なりとは本当ですね。普通の人なら恥ずかしくて出来ないことでも、どんどんやれるには、無知で無いと出来ないです」
ややあって、彼女は小顔をひたとこちらに向けて「でも、怖いですよね、こんな人が名誉を得て、力を持つのが通るなんて・・・」
同じく表現を志す若い彼女にっては、この現実は、いやだし怖いだろうと思う。
「ぼくは怖いとは思わない。才能もなくて世界をかえられませんよ。現になんもぼくには影響も与えないし、街なんら変わっでないし。
それに人はあっという間に年取ってしまう。超高齢になってごらん、毎日は心身の衰えとの戦い、そしてついに死だ。その人生晩年に「賞」がなんの役に立つ。心の支えは強い自我、これは知性といってもいいけど。彼には耐震偽装された自我しかない。人生の終末期のストレスに、偽装自我はたちまちクラッシュする。そして
重篤な心身の病気になるでしょうね。神様は最後に人生の意味をを示すのかな」
「それなら、若いときに、気づかしてあげればいいのに」
「いや,神さへ改心させられない悪というのは存るのでしょうね。悪があるから正が理解できるように悪の存在を放置する。彼も悪の役割を担って人生を終わるのでしょうね。これも運命かも。あなたどっちを選びます・・?
彼女ようやく顔をゆるめるような気がした。いや緊張のひと時でした。
「どうしましたか?」 「いえ、先日のことを思いだしまして・・」
実は先日、彼女は、イベントのお礼である人物、親子ほど年の違う人に挨拶に行った。彼はすぐに彼女を食時に誘った。彼女は礼儀として誘いに応じた。で、その席での話しだ。彼は、席に着いたとたんに彼女に向かって、いかに自分の芸術が素晴らしいか、自分の活動が評価されているかをしゃべり始めだした。止まりようもないので、たまりかねて彼女は素晴らしいです。ほんと・・さんの業績は良くうかがってきましたと言ったところ、それをまともに受け取られますますハイテンションになり、一時間近くにもなり食べる楽しみも消えてしまったというのだ。
「こんなお世辞をまともに受け止めるなんて、信じられます」ときれいな眉を動かし、しぐさで「素晴らしいですわ」のお世辞をくりかえしてみせた。
「女の言葉の裏を感づかないなんて、トラに餌を手でさしだすようなもんね」
ここで笑って終わりだが、彼女は目をすえたように固まっているのだ。
「その人、もう生命力が弱っていたんじゃないの、それで若いあなたにすがろうとしたのかも」
「生命力はすこしは弱ってらしたかも。でも、後で聞いた話では、その賞をもらうためには、選考委員の知人に、電話、面会をくりかえし、行政やメディアの教え子などにも賞を与えられるようにと、執拗な要請されたと聞きました。そして、とうとう取られたんですよ。凄いですよ、そのエネルギーは!」
「ふーん、<無知こそ力なり>のオーエルの言葉があるけど・・」
「そうなの、そうなの、無知こそ力なりとは本当ですね。普通の人なら恥ずかしくて出来ないことでも、どんどんやれるには、無知で無いと出来ないです」
ややあって、彼女は小顔をひたとこちらに向けて「でも、怖いですよね、こんな人が名誉を得て、力を持つのが通るなんて・・・」
同じく表現を志す若い彼女にっては、この現実は、いやだし怖いだろうと思う。
「ぼくは怖いとは思わない。才能もなくて世界をかえられませんよ。現になんもぼくには影響も与えないし、街なんら変わっでないし。
それに人はあっという間に年取ってしまう。超高齢になってごらん、毎日は心身の衰えとの戦い、そしてついに死だ。その人生晩年に「賞」がなんの役に立つ。心の支えは強い自我、これは知性といってもいいけど。彼には耐震偽装された自我しかない。人生の終末期のストレスに、偽装自我はたちまちクラッシュする。そして
重篤な心身の病気になるでしょうね。神様は最後に人生の意味をを示すのかな」
「それなら、若いときに、気づかしてあげればいいのに」
「いや,神さへ改心させられない悪というのは存るのでしょうね。悪があるから正が理解できるように悪の存在を放置する。彼も悪の役割を担って人生を終わるのでしょうね。これも運命かも。あなたどっちを選びます・・?
彼女ようやく顔をゆるめるような気がした。いや緊張のひと時でした。